本年度はコロナ禍の影響により、10月に米国で開催が予定されていた放送・映像業界最大の展示会NAB Showが中止される中、キヤノン初のVR対応レンズ「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」が、2021年10月6日に発表された。
これまでの同社の新しい映像領域へのアプローチを振り返ってみると、業務用途のMR(Mixed Reality/複合現実)ヘッドマウントディスプレイであるMREALが1997年より開発が開始され、その後改良を続けながら産業分野に導入されてきた他、昨年には、ボリュメトリック映像の高速生成を実現する「ボリュメトリックビデオスタジオ‐川崎」が開設、そこからバーチャルライブ配信のデモが行われている。
その他、NAB Showやキヤノンが5年に一度開催している技術展Canon EXPOでも、360°カメラの試作リグやギガピクセルイメージ、多視点映像の参考展示がなされてきた。今回発表されたRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEは、昨年7月に発売された同社のハイエンドのフルサイズ・ミラーレス一眼カメラEOS R5と組み合わせることで、180° 3Dの8KVR動画と静止画の撮影を可能にするシステムだ(2021年12月新製品発売時にEOS R5を最新のファームウェアにアップデートする必要がある)。
180° VR映像は、視野角が垂直・水平方向共に180°の画角を持つ3Dフォーマットで、ヘッドマウントディスプレイを利用することにより、没入感を持った立体的な視聴を可能にするものだ。デバイスのローカルのストレージ内にファイルを保存して再生したり、YouTubeやOculus TVなどのVR対応プラットフォームにコンテンツをアップロードして、公開する。
180°のVR動画の場合、360° VR動画と異なる点は、データの解像度を効率的に利用できること。撮影者やスタッフ、照明等の機材が映り込まないので、撮影時の注意や、ポスプロ編集時の不要物の除去などの手間が減らせること。また、従来の映像のストーリーテリングが通用する等のメリットがある。
そして、この製品はEOS R5に装着して使用する交換レンズという性格上、これまでVR動画撮影を手掛けていなかったビデオグラファーや写真家のVR映像制作への参入も期待されると同時に、高品質な成果物を求めていたVR映像クリエイターの同製品の導入も見込まれる。
撮影後のデータをVR映像として視聴するためには、従来の映像編集のプロセスに加えて、ステッチやVR映像専用の形式(正距円筒図法)に変換する作業が必要だが、EOS VR SYSTEMでは、同社のスタンドアローンのVR動画確認・変換アプリ「EOS VR Utility」(有償)とプラグイン「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」(有償)が用意されており、シンプルなワークフローで工数の節約が図れるようになっている。
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