ファミリーマートのコピー機が今日12月1日から新型に順次切り替えられる。
「コピー機なんて進化はほとんどないんじゃないの?」と思われるかもしれない。確かに、機材が刷新されるのは、実に9年ぶりのことだ。この間に技術的進化もさることながら、コピー機や印刷物にまつわるビジネス環境も大きく変化している。
ファミマは、今回の最新型を「今後10年を見据えた刷新」だと説明する。ペーパーレス、サービスのデジタル化が進む中で、コピー機に求められる機能はどう変化するのか。新型機から、最新のコピー機事情をみていきたい。
12月1日以降に順次全国展開されるファミリーマートの新型マルチコピー機。操作パネルが15インチと大型化した。車椅子でも操作しやすいよう角度を変えられるほか、横方向の覗き見防止でプライバシーフィルタも搭載する。
撮影:鈴木淳也
最新型マルチコピー機で最大の特徴は「画面の大型化」だ。
従来はコピー機本体に内蔵していた10インチサイズのものが、釣り銭機や写真用プリンターのある横の装置側に移動した。
画面の大型化により視認性が向上し、特に印刷プレビューなどの画面が確認しやすくなった。また一度に表示されるメニュー項目が増えたことで項目選択のために画面を何度も切り替える必要がなくなり、操作性も向上している。
この大型ディスプレイは角度を変更することもできる。例えば車椅子の利用者には、画面を立てることで操作や確認がしやすくなった。
15インチに大型化された液晶画面。視認性と操作性の両方が向上。のぞき見防止フィルターも搭載した。
撮影:鈴木淳也
入れ替え前の従来型のコピー機。液晶はコピー機本体側に内蔵していた。
撮影:鈴木淳也
「最近、家でプリンタを使わずに、コンビニで印刷する機会が増えた」という方は多いのではないだろうか。筆者自身もそうだ。
家庭やオフィスでペーパーレスが進むなかで、紙で印刷する機会の大半が、いまだ紙ベースのやりとりが根強い「行政関連の書類」というケースも少なくない。
となれば「たまに必要になる印刷はコンビニに任せてしまった方がランニングコストが安い」と考える人が増えたのが、ここ10年あまりでの市場の大きな変化ではないか。
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新型マルチコピー機で提供されるサービス。このうち完全な新機能は「シールプリント」で、ファミポートの機能も順次移管される。
撮影:鈴木淳也
ファミリーマートの調査にも社会の変化が現れている。
ファミリーマートによると、USBメモリーなどメディアを使った印刷は微減しているものの、ネットプリントは年率20%程度の増加、写真プリントは2020年比で30〜40%増、行政サービスに至っては150〜170%ほど伸びているという。
コロナ禍の影響もあり、市役所や区役所などの自治体がコンビニのサービスで住民票の写しなどを入手するよう誘導している事情もあるが、「紙への印刷」という面でコンビニの利用頻度が上がっていることは間違いなさそうだ。
もっとも、コピー機の最大の需要は通常の「コピー」にある。そのほかのプリントサービスは、「コピー利用ほどではないものの、現在急成長中」というのが実態だ。
新型のマルチコピー機ではさまざまな機能を内蔵しているが、中でも人気なのが「コンテンツサービス」だという。アイドルやキャラクターのポスターやブロマイドなど、さまざまな人気コンテンツが用意されており、印刷できる。
この仕組みそのものは、コピー機本体を納入しているシャープが運営しているが、ファミリーマート独自の「ファミマプリント」というコンテンツサービスがあり、需要が大きい。新型機では、L版またはL2版のシール印刷ができるようになり、印刷したコンテンツや写真をシール化できる。
現在ファミリーマートオリジナルで最も伸びているビジネスがコンテンツ印刷の「ファミマプリント」。大型化によりメニューに一度に表示できる情報量も増えている。
撮影:鈴木淳也
このようなL版、L2版サイズのシールを印刷可能。
撮影:鈴木淳也
新型コピー機の設置が完了した店舗では、ファミポートが将来的に撤去される。
撮影:鈴木淳也
機能面でいえば、新型マルチコピー機の最大の特徴の1つは「ファミポート」の統合だ。
従来、店舗ではコピー機とファミポートが1台ずつ設置されていたものが(大学周辺などコピー機が複数台設置されている店舗もある)、機能統合後は1台に集約される。機器が統合された店舗は将来的にファミポートが撤去されるため、空いたスペースの有効活用につながる。
ファミポートの機能統合にあたり、新型機では新たに「QRコードリーダー」と「磁気カードリーダー」が取り付けられた。
QRコードは「スキップ」と呼ばれる操作に必要なもので、例えばファミポートをメニュー操作することなく、目的の機能へ誘導するためのQRコードを事前に入手して読み込ませることで、「支払い用バーコードの印字」などが、必要最低限の操作で済むための仕組みだ。
磁気カードリーダーについては、キャッシングサービスなど一部の機能において物理カードにICチップを内蔵していないケースがあり、その対応のために必要だという。
端末の集約により利用者が混雑しないのか聞いてみ。ファミマでは、現在はスマートフォンユーザーが多いことも鑑みて、「コンテンツサービスを提供するプロバイダ各社には、誘導用のQRコードを発行するようお願いをして、操作に時間がかかることでなるべく待ち時間ができることのないよう工夫を進めている段階」とのことだった。
操作部。特徴としては紙幣を1000円札4枚まで投入可能になったことと、ファミポート移管を見据えて左側にある磁気ストライプ読み取り機が設置されたことが挙げられる。
撮影:鈴木淳也
現在は支払い手段で「現金」しか表示されないが、開発段階ではここで複数の決済手段を選べるようになっていたという。
撮影:鈴木淳也
このようにさまざまな機能が1台に統合されたファミリーマートの新型マルチコピー機。1点気になったのが「キャッシュレス非対応」という点だ。つまり、2021年になっても、ファミポートでの支払いも、印字されたバーコード(JANコード)をレジに持ち込んで会計する必要がある。
QRコード読み取りの機能まで持っているのに、なぜ「レジ払い」を続けるのか?
ファミマとしては、もともとキャッシュレス対応を目指して機器開発を進めており、操作パネルにあるICカードリーダーも、現在のようにマイナンバーカードや住基カードだけでなく、FeliCaや非接触クレジットカードなどへの対応が可能になっているという。
現時点では支払い手段の項目では「現金」のみを表示し、投入金額も1000円紙幣で最大4枚まで、という実装になった。
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