オーディオブランド「nura(ニューラ)」の3製品をチェック。左がワイヤレスヘッドホン「NURAPHONE」、右上がワイヤレスイヤホン「NURALOOP」、右下が完全ワイヤレス「NURATRUE」
最新のヘッドホン/イヤホンでは、3D立体音響やヘッドトラッキング機能などの空間表現を持ち合わせるなど、単純に音質だけでなく、多様な機能性がアピールされるようになってきた。そんな中、個々人で異なる耳の聞こえ方を調整し、誰もが同じ音を聴けるようにしてくれる「音声パーソナライズ」機能に注目が集まっている。【写真】専用アプリでは、自分の聴覚の状況を円や色でグラフィカルに表現してくれるアップル「AirPods」シリーズに搭載されており、Jabraの新しい完全ワイヤレスイヤホンでも好評を博すなど、今でこそさまざまな製品で採用されているこの機能だが、実は5年ほど前から、乳児(赤ちゃん)の難聴を測定する技術を応用した独自システムを展開しているオーディオブランドがある。それが「nura(ニューラ)」だ。nuraってどんなオーディオブランド?オーストラリアのメルボルンに本拠を置くnuraは、2016年に歴史をスタートした新進気鋭のオーディオブランド。オーストラリアの王立視覚聴覚専門病院に務めていたというルーク・キャンベル氏が、当時クアルコム・アセロス社に在籍していたドラガン・ペトロビーチに独自のアイデアを持ちかけたことがきっかけで、この事業がスタートしたのだという。同社にとって初めての製品となった、NC(ノイズキャンセリング)機能を搭載する密閉型ヘッドホン「NURAPHONE(ニューラ・フォン)」は2016年にクラウドファンディングで展開。180万ドル(約1億9,000万円)の資金調達に成功するなど大きな注目を集めたのち、一般発売を開始している。さらに、2018年にはヌードルワイヤレス型(ネックバンド型)の「NURALOOP(ニューラ・ループ)」、2021年にはTWS(完全ワイヤレスイヤホン)の「NURATRUE(ニューラ・トゥルー)」をリリース。執筆時点で上記3製品を展開中で、そのすべてが独自の音声パーソナライズ機能を搭載しており、さらにNC機能も備えている。Amazon.co.jpでの販売価格(2月21日時点)は、NURAPHONEが42,840円(参考価格:55,000円)、NURALOOPが15,480円、NURATRUEが23,899円だ。スマホアプリで音声パーソナライズ。音が聴きやすい印象に変化Nuraが「オーダーメイドサウンド技術」と呼ぶ音声パーソナライズ機能は、なかなかに斬新であり、かつ効果的だ。よくあるタイプ、つまり音が聞こえているか否かを手動で調整するタイプではない。耳の中へ音を発してそれをマイクで集音し、その人の耳がどんな音を聴いているかを計測して自動補正をかける……というシステムになっている。先にも紹介したとおり、同機能は乳児の難聴を確認するために使われるシステムをベースにしており、人間の感性に左右されず、物理的な特性のみを計測できるシステムなのだという。これを活用して個々人で異なる耳の特性に合わせて調整を行い、誰もが同じ音を体感できるようになっている。この調整にはスマートフォン専用アプリを活用するが、分かりやすく使い勝手がよい。まずはnuraのヘッドホン/イヤホンをスマートフォンとBluetoothで接続し、アプリのガイドに従って耳の中を計測。操作が完了した後に1分ほど待つと、左右個別に音響補正した結果を自動的に設定してくれる。とても簡単な調整内容であり、それでいて効果的な、誰もが同一のサウンドを手に入れられる。実際、NURAPHONE、NURALOOP、NURATRUEの3製品で改めて調整を試みてみたが、以前試聴したときに感じた好印象から変わりはなかった。とにかく、とても聴き心地の良いサウンドになってくれるのだ。人間、音を聴くときには本能的に脳内で左右バランス、音色の調整をしているようだ。特にヘッドホン/イヤホンの場合、“自然の音と違う”とかなりの調整を行ってしまうのか、音量の大きさと合わせて、長時間聴き続けていると疲労を感じてしまう。若い頃は重低音サウンドが大好きだったが、気がついたら聴き心地の良いナチュラル系サウンドが好きになっていた……というのは、こういった負担がだんだん苦痛になっていった結果なのかもしれない。そう、nuraによって音響調整された音は、とても楽なのだ。聴感上の印象の話だが、聴こえづらい帯域がなくなり、さらに左右の微妙な聴こえ方の差もなくなるので、とてもリラックスして音楽を楽しめるようになる。特に左右の差に関しては(補正するのにかなり脳を使っているようだが)、人間側だけでなくイヤホン側の左右差も解消されるのか、格段に聴きやすい印象。いちど調整後の“楽さ”を味わってしまうと、手放しがたくなってしまう。アプリ単体で発売し、他社製のお気に入りヘッドホン/イヤホンでも同じ機能が活用できればいいのに、と思ってしまうほどだ(nuraが特性を把握しているフィードバックマイクが必要なのでまず無理だが)。さらに、nuraアプリにはちょっとしたサウンド調整機能もあり、アプリを操作することで低域ボリュームや音の広がり感などを調整することができる。自動調整されたサウンドはやや低域が強めに設定されている傾向があるので、嗜好に合わせて多少なり、しかも簡単に微調整できるのはありがたい。なお余談だが、nuraアプリに表示される調整結果は低域から高域までを円で、左右を色で表現してくれるのでとても分かりやすく、自分の聴覚の状況を把握するのにも役立つのもいい。nuraの音響調整はかなりセンシティブで、しっかり装着しないと理想的な調整結果を実現できない。プロファイルは3つまで保存できるので、装着の深さを変えてみたり測定し直してみたりと、慣れるまで何度か試してみることをオススメしたい。コツは、耳穴が痛くならない程度に大きめのイヤーピースを、できるだけしっかりと深めに装着すること。こうすることで、より効果的な調整結果を得やすくなる。NCも使える完全ワイヤレス「NURATRUE」を聞くここからはnuraの3製品それぞれの特徴を紹介していこう。まずは最新のTWS「NURATRUE」から。NURATRUEは、NC機能を搭載するTWSで、(当然のごとく)外音取り込みにも対応、もちろん音声通話も行える。装着センサーを搭載しており、アプリから設定することで片側のみで利用できる。片側を外したときに音楽再生を停止する設定も可能だ。IPX4の防滴性能を備えており、突然の雨やスポーツ時にも安心して活用できる。連続再生時間はイヤホン単体で約6時間、専用ケースからの充電と合わせて約24時間で、充分なバッテリーライフといえるだろう。BluetoothコーデックはaptXにも対応する。イヤホン本体はフェイスプレート部分がやや大きく、シンプルなロゴデザインと合わせて結構存在感を主張する。とはいえ、重さは7.4gと決して重くはなく、装着感は軽快なほうだろう。また、楕円形のノズル部や独自デザインのイヤーピースに加え、イヤーフィンも採用されているため、フィット感はかなり良好といえる。音声パーソナライズ機能を有効にしたNURATRUEのサウンドは、ナチュラルテイストの聴きやすいサウンドが特徴。耳に心地よい高域によって、リラックスして音楽を楽しむことができる。ちなみにパーソナライズをオフにすると、かなりウォーミーなサウンドに感じられ、音場的にも広がり感が弱くなる。パーソナライズはオンにして使うのが大前提といえる。有線接続もできるネックバンドイヤホン「NURALOOP」を聞く続いて「NURALOOP」を紹介しよう。こちらは、いわゆるネックバンド型のBluetoothワイヤレスイヤホンで、フィット感の良好なイヤーモニター型の左右イヤホンがケーブルで接続されている。BluetoothコーデックはaptX HDも採用しており、対応するAndroidスマートフォンなどと組み合わせることで良質なサウンドを楽しめる。付属のUSB-A端子の充電ケーブルは、イヤホン側にマグネット接続タイプの独自端子を採用し、簡単に充電できる。また、この充電端子に接続できる3.5mmステレオミニのアナログケーブルを同梱し、有線接続でサウンドを楽しむことも可能だ。パーソナライズ機能やNC機能を搭載する点はNURATRUEと変わらず、IPX4の防滴機能も備えている。連続再生時間は約16時間で、必要充分といえるだろう。aptX HDに対応しているおかげもあってか、音質的には完全ワイヤレスのNURATRUEに対してアドバンテージがあり、解像感の高いきめ細やかなサウンドだ。音場的な広がりもいっそう大きくなり、俯瞰的にステージを見渡せるようになる。低域の量感もやや有利だ。聴き心地の良い音色傾向も含めて、魅力的なサウンドといえるだろう。nura 1stモデル、ワイヤレスヘッドホン「NURAPHONE」を聞く最後に、唯一のヘッドホンにしてnuraブランドの記念すべきファーストモデル「NURAPHONE」を紹介しよう。NURAPHONEは、アラウンドイヤーパッドと密閉型ハウジングを持つワイヤレスNCヘッドホンで、ユニークな内部構造を採用している。厳密な音響効果を実現するため、イヤーパッドの内側に(耳穴に挿入する)カナル型のイヤーピース/ノズル部を備えているのだ。こういった構造を採用する製品は、ほとんど見たことがない。音響調整のために、必須のシステムなのだろう。ちなみに、ドライバーはカナル型の部分に中高域、その周囲に低域を担当するドライバーユニットを搭載している。Bluetoothコーデックは、ワイヤレスイヤホンのNURALOOPと同様にaptX HDにも対応しており、同コーデックに対応したAndroidスマートフォンと組み合わせることで良質なサウンドを楽しめる。USB A端子の充電ケーブルは、ヘッドホン側には独自端子を採用。ここに付属のアナログケーブル(3.5mmステレオミニ)を接続して、有線でサウンドを楽しむことも可能だ。連続再生時間は約20時間と、ワイヤレスヘッドホンとしてはまずまず、必要充分なバッテリーライフといえる。ヘッドバンドとイヤーカップの接続パーツ(丸い部分)がタッチパッドになっていて、ここから各種操作が行えるなど、使い勝手の面では他の2製品とそう変わらないNURAPHONE。唯一、カナル型ノズルの装着だけはちょっとしたコツが必要で、大きめのイヤーピースを装着し、できるだけ密閉性を高めるのがよい(そうしないと設定時にアプリから装着不良のエラーが出されて先に進めない)ので、色々と試してみて欲しい。大口径ドライバーユニットの余裕だろうか、音質に関してはヘッドホンのNURAPHONEが一番アドバンテージがある。特に、低域の量感とフォーカス感のよさが優位で、迫力がありながら自然な音色のサウンドを楽しめる。使い勝手がいいNURATRUE、フィット感の高いNURALOOPもよいが、音の迫力や楽しさについてはNURAPHONEが一歩リードしている。使い勝手を選ぶか、迫力を選ぶか。音質パーソナライズ機能のアドバンテージはどれも変わらないので、その先のプラスアルファで自分にとってベストな“nura”を見つけ出して欲しい。 野村ケンジのむらけんじポータブルオーディオやホームオーディオなどのAV機器をメインに、専門誌やモノ誌、WEB媒体などで幅広く活躍。特にヘッドホン&イヤホンに関しては、年間300以上の製品を10年以上にわたって試聴し続けるなど、深い造詣を持つ。また、TBSテレビ「開運音楽堂」やレインボータウンFM「みケらじ!」にレギュラー出演するなど、幅広いメディアでの活動を行っている。
野村ケンジ
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