(2020/09/23更新)
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークの拡大が進む昨今。リモートワークではインターネットの通信速度は生産性を大きく左右しますが、インターネットの接続の不安定さや速度の遅さに対し、不満を抱く人も多いのではないでしょうか。
本記事では、Wi-Fiの高速化のために行うべきことを具体的かつわかりやすく解説します。Wi-Fiの仕組みと適切な対策方法は、企業規模だけでなく一般家庭においても同様ですので、インターネットの速度についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
まず、通信の改善についてイメージしやすくなるように、インターネットの仕組みについて簡単に解説します。
図の矢印で示された区間が「通信」を行っている部分です。この区間について改善を行いますが、改善において必要なことを簡単に紹介します。
インターネットのユーザーが実際に目で見て触ることができる範囲です。そのため、通信の見直しはこの区間において行う場合が多くなります。「機器の入れ替え」「利用環境の調整」「利用の仕方の検討」を行うことで、通信状態の改善が見込めます。
特に、Wi-Fiの電波が弱い場合にはこの区間での問題が多いです。
ルータからインターネットに接続するまでの区間では、「ISP(※1)の変更」やネット回線を提供する「通信業者(※2)の変更」「利用サービスの変更」を検討します。費用はかかりますが、変更による効果は大きいです。利用サービスを間違うと悪影響が出ることもあるため、知識のある人が行うのが望ましいです。
Wi-Fiの電波が強くても、実際のインターネット接続が遅い場合はこの区間で問題があります。
(※1)ISP:インターネット・サービス・プロバイダの略。ocnやSo-netなど(※2)通信業者:回線業者とも言われる。NTT東日本やソフトバンク、auなど
通信には相手が存在するため、相手先の通信環境の改善によって状況が改善する場合があります。基本的に自分で行えることはありませんが、劇的に状況が良くなる場合もあります。
インターネット接続の速度はさまざまな要因で決まるため、多少の変動は常にあります。体感速度が必ずしも正しい速度を反映しているとは限らないため、通信速度を測定したい場合は必ず「スピードテスト」を利用しましょう。「インターネット スピードテスト」で検索すると、多くのサービスが表示されます。
スピードテストでは、送受信するファイルサイズや測定方法を定めることで、通信速度の比較がしやすいように配慮されています。サービスによって測定方法が違うため、速度を比較したい場合はできるだけ時間帯や利用サービスを決めて測定を行いましょう。同じサービスを利用しているユーザーの平均速度やエリアごとの情報を紹介してくれるサービスもあり、通信環境の検討に便利です。
家庭内のネットワークでも企業内のネットワークでも、場所を選ばず多くの機器を利用できるWi-Fi(無線LANと呼ばれることもある)は非常に便利で、LANケーブルによる有線接続に替わり主流になっています。Wi-Fiの電波はルータもしくはルータに接続したアクセスポイント(※)と、パソコンやスマートフォンなどの各デバイスとの間で送受信されています。
「Wi-Fi」と一言で表現してはいるものの、飛び交っている電波には種類があり、それが通信速度に影響している場合も多いため、その性質をわかって利用する必要があります。特に重要な、Wi-Fiの種類と特性について確認してみましょう。
(※)アクセスポイント:Wi-Fiの機能を持たないルータに代わりに電波の送受信を行う装置。
Wi-Fiによる通信を行うために定められている規格がIEEE802.11です。IEEE802.11では、規格の種類によって末尾にさまざまな英文字がつきます。大まかな特徴は図の通りです。
通信規格 | 通信速度(最大) | 周波数帯 |
---|---|---|
IEEE802.11a | 11Mbps | 5GHz帯 |
IEEE802.11b | 54Mbps | 2.4GHz帯 |
IEEE802.11g | 54Mbps | 2.4GHz帯 |
IEEE802.11n | 300Mbps | 2.4GHz/5GHz帯 |
IEEE802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz帯 |
IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz/5GHz帯 |
※1Gbps=1000Mbps
家庭や企業で利用するルータは、これらの通信規格のいずれかに対応しています。「通信速度」は理解しやすい概念ですが、「周波数帯」もWi-Fiを考える際には重要です。それぞれの周波数帯の特徴は以下の通りです。
周波数帯 | 特徴 |
---|---|
2.4GHz帯 | 障害物に強いため、屋内・屋外を問わず無線通信がしやすい。電子レンジやBluetooth、ドローンなども同じ周波数帯の電波を使用している。 |
5GHz帯 | 障害物に弱いが、同じ周波数帯を使う機器がないため干渉が少なく、通信が安定しやすい。 |
利用しているルータで、どの規格が利用可能なのかはルータの機種名で検索するとすぐにわかります。以下、各規格について簡単に紹介します。
IEEE802.11a/b/g は、Wi-Fiが登場した頃から活躍している規格です。aは短距離の高速通信、bは中~長距離の通信に使われ、進化型のgはaとbのいいとこ取りをしたような規格です。現在の一般的な通信機器においては、規格に対応はしているものの、より高性能の規格があるため利用されることはあまりありません。
IEEE802.11nは、一般的に普及している規格です。通信可能な距離も長く、通信速度も従来よりずっと高くなっています。また、周波数帯を2つ持つのも大きな特徴で、利用環境に合わせたネットワーク設定がしやすくなっています。現在、カフェや飲食店、公共施設などで提供される無料Wi-Fiの多くはこの規格を使っています。
IEEE802.11acは、比較的新しい規格です。主流だったIEEE802.11nよりも圧倒的な通信速度を実現することができること、干渉の少ない5GHz帯の電波を使用しているのが特徴です。高速で安定感がありますが、対応機器のコストがまだ高いことや、型の古いパソコンやスマートフォン、プリンタなどのエンドポイント機器が通信規格に対応していない場合があります。
IEEE802.11axは、現時点(2020年9月)における最新規格で、IEEE802.11acよりもさらに高速な通信を可能にします。また、電波の周波数帯が2種類で環境に合わせたネットワークを構築できます。現時点では対応機器が少ないことや、機器のコストが高いのが難点です。
Wi-Fiの通信速度の改善は、さまざまな方法で行うことができます。どのタイミングで遅延が生じているかをよく考えながら対策を行うことが大切です。実際にWi-Fiの通信速度の改善に向けて、試してみたい方法を5つ紹介します。
まず、最も簡単で効果が高い方法はルータ(またはアクセスポイント)の買い換えです。古い規格にしか対応していないルータだと、どんなに高速なインターネット回線を持っていても、ルータまでのデータの送受信に時間がかかるため、遅いと感じてしまいます。
ルータの機能は接続機器の確認やインターネット接続、セキュリティなど多岐にわたり、処理能力が低い古いルータだと、規格や速度に問題がなくとも処理に時間がかかる場合があります。
企業では一般的な家庭用ルータではなく、企業用の高機能ルータ(スイッチと呼ばれることもある)を利用した方がパフォーマンスが良くなることが多いです。
古いパソコンやスマートフォンを利用している場合は、Wi-Fiの古い規格にしか対応しておらず、インターネット回線やルータの性能が引き出せないことがあります。
ルータやアクセス機器の設置位置はとても大切です。各規格には理論上の通信可能距離が定められていますが「電波は近ければ近いほど強い」が原則です。電波が弱ければ、通信は遅くて不安定になるため、作業者にとってストレスの多い環境になってしまいます。ユーザーが動いてもいいですが、使いやすい位置をよく考えて設置することが大切です。「遅い」と感じたらまずは設置場所の移動を行ってみましょう。
5GHz帯の電波を使用してWi-Fiに接続する場合は、障害物に注意が必要です。部屋の壁や窓などが障害物になる場合もありますし、設置場所の周辺が物で埋め尽くされているような場合も電波が弱まります。商業施設やイベント会場など人や物が多い場所も注意しましょう。
2.4GHz帯は、電子レンジやBluetoothなどでも利用されている周波数帯です。そのため、さまざまな機器から発信された電波が衝突して干渉し合い、その結果電波が弱くなってしまいます。飲食店のWi-Fiでは、お店の人が電子レンジを使うと通信が不安定になることがあります。自宅なら、ルータやアクセスポイントはできるだけキッチンから離れた所に設置することが大切です。ワイヤレスのイヤホンやマウス、キーボードなどの機器を使う場合は、Wi-Fiは5GHz帯の電波を使う通信が少し安定します。
現在は無線接続が可能な機器が非常に多くなっています。パソコンだけでなく、プリンタや家電製品、スマートフォンやタブレット、ゲーム機などもWi-Fiを通してネットワークに接続しています。多くの機器からの接続要求や通信の確立、情報のやりとりのためにルータは大忙しです。
ネットワークの根幹を担うルータは、多くの仕事をしているため、その負担を減らすことも大切です。有線接続が可能な機器は有線接続にした方が通信が高速で安定します。LANケーブルもインターネットが高速になる中で規格が変わっているため、古いケーブルが余っているからと使うのは避けた方が無難です。
また、無関係の機器からの接続を少なくするためにも、Wi-Fiのパスワードを必ず設定しましょう。特にオフィスがBYOD環境(個人のデバイスを持ち込んで使える環境)の場合は必須です。店舗などでお客様用にオープンなWi-Fiを準備したい場合でも、社員用のネットワークとは分けた方がセキュリティ上も安心ですし、パフォーマンスが安定します。
ルータの設定を自分で変更できるなら、チャネル(チャンネル)の変更も考えてみましょう。
通信において、Wi-Fiの電波はチャネルと呼ばれる範囲に分割されて使われます。2.4GHz帯は13個、5GHz帯は19個のチャネルを使用できますが、各チャネルを束ねて使用することもあるため、実際に使用可能なチャネルはそれほど多くありません。通信で使われるチャネルが多いと、電波の干渉が起こって通信が遅くなったり不安定になったりします。
自宅や会社で使用しているルータのチャネルが初期設定のままだと、同種の機器が近くにある場合に同じチャネルを使われてしまい、干渉が起こりやすくなってしまいます。チャネルを初期設定から変更することで、電波干渉が減って通信状況が改善することがあります。「Wi-Fi チャネル (使っている機器名)」などのキーワードで検索すると多くの情報を得ることができるでしょう。
インターネット回線の変更は、時間やコストがかかる一方で状況を大きく改善できる場合が多いです。パソコンなどの機器に表示される電波の強さは、ルータやアクセスポイントからの電波の強さであり、インターネットの接続速度ではありません。そのため「電波は強いけど遅い」ならその背後のインターネット回線の問題です。どの業者がいいとは一概に言えませんが、「長く使っているサービスは変更する」「マンションタイプの回線は変更する」「人気の高いモバイルWi-Fiルータは避ける」といった方針で改善を検討することをおすすめします。
長く使っているインターネット回線やISPは、契約時から内容が変わっていないことが多々あります。インターネットの光回線は、10~15年前なら100~300Mbpsが主流でした。現在は1Gbps(=1000Mbps)以上が主流ですが、古い契約のまま低速回線や低速のISPのレンタルルータを使い続けていることがあります。定期的に契約を見直し、最新のインターネット環境に近づけることが大切です。
集合住宅や集合オフィスなどの「マンションタイプ」のインターネットサービスはその性質上、不安定になりやすいです。利用者ごとではなく、建物ごとにインターネットサービスを契約し、内部で各部屋に割り当てることで低コストでインターネットを使えるようにしているためです。インターネットが最初から使える賃貸物件なども同様です。
このケースでは、1つの回線を共同利用するため、インターネットを利用している人が多くなるほどパフォーマンスが低下します。見分けるためには、時間帯による通信パフォーマンスに着目します。利用者の生活リズムからパターンができやすく、集合住宅なら、住人が帰宅する夕方から夜の時間帯、集合オフィスなら日中の時間帯に不安定になることが多いです。パフォーマンスが不快を感じるほど悪い場合は、コストはかかっても個別にインターネットを契約することをおすすめします。
携帯電話と同様に、基地局と電波の送受信を行いますが、基地局に電波が集中するとパフォーマンスが大きく低下します。また、普及しているモバイルWi-Fiルータほど、使用する周波数帯や使用チャネルも同じで電波干渉が生じやすいので注意しましょう。パソコンやスマートフォンで接続可能なネットワークを調べたとき、似た名前のSSIDが並んでいる場合は「付近に同じ機器が多い」「初期設定の機器が多い」ことが予想されます。自分の利用機器と重複するようなら、モバイルWi-Fiルータの変更を検討するとよいでしょう。
インターネットの閲覧やメールだけでなく、業務用のさまざまなサービス利用やビデオ会議、家電活用など、Wi-Fiは今や私たちの生活や仕事になくてはならないものになっています。その通信速度や安定性は、生活や仕事の満足度に大きく影響することは疑いありません。
Wi-Fiのパフォーマンスはさまざまな理由によって変動するため、定期的にインターネット環境や通信機器を見直して最適化することが大切です。
Wi-Fiの見直しは、ITの知識が必要な場合もありますが、知識がなくても簡単にできる場合も多いです。見直しに少し時間やお金を投資するだけで生産性が大きく向上する場合もありますので、今回紹介した方法をぜひ試してみていただければと思います。
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