機械部品などを生産する現場では、現在多くのNC工作機械が導入されています。なかでもNC旋盤やマシニングセンタは、NC工作機械の代表的なものになっています。これらはものを作るための道具です。精度や能率などの目的を満たした「ものづくり」を行うためには、その特徴や作業内容を十分理解しておく必要があります。本連載では、6回にわたりNCの基礎知識について解説します。初回となる今回は、「NCとは」と題し、NCの定義や制御方式などについて解説します。
NCは1950年頃、アメリカ人のJohn T.Parsonsが考案したといわれています。ヘリコプタの回転翼を製作する際、翼形状の検査ゲージを効率的かつ正確に製作するため、NCフライス盤を開発しました。現在、多くの工作機械にNC技術が活用され、ものづくりにはなくてはならないものになっています。
NCは、numerical control(数値制御)の頭文字をとった略称です。JISでは「工作物に対する工具経路、加工に必要な作業の工程などを、それに対応する数値情報で指令する制御」と定義されています。言い換えれば「数値と記号によって工作機械を自動的に動かす」ということになります。
工作機械に指令を与えるコントローラをNC装置といいます。従来のNC装置では、……
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NC工作機械は、図2に示すように、NC装置と工作機械により構成されています。サーボ機構とは、NC装置からの指令により工作機械の刃物台やテーブルなどを動かす機構です。人間で例えるなら手足の役目を果たすもので、指令を出すNC装置が脳にあたります。
図2:NC工作機械のしくみ各種NC工作機械に利用されてきた、代表的なサーボ機構の制御方式は以下のとおりです。
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高度成長期時代の日本では、現在に比べて製品ライフサイクルは長く、生産形態は「少品種多量生産」でした。同じものをたくさん作って安く売るという方法です。多量生産される特定形状の製品に対しては、平面加工や穴加工などを専門に行う専用工作機械が用いられました。また、1台の専用工作機械で完成しない製品については、専用工作機械を加工順にならべて搬送装置で結んだ、トランスファマシンが使用されました。
時代が進むにつれて、消費者ニーズの多様化や市場の変化などにより、製品ライフサイクルは以前よりも短くなりました。それに伴い、……
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前回はNCの定義や制御方式などについて説明しました。今回はNC工作機械の種類と特徴について解説します。NC工作機械には加工対象物や加工方法、加工精度に応じ、多くの種類が存在します。その特徴について、汎用工作機械と比較して解説します。また、NC工作機械の種類および、代表的なNC旋盤、マシニングセンタを取り上げて、構成などについて解説します。
工作機械は、汎用工作機械とNC工作機械に大別できます。汎用工作機械は、作業者が各種ハンドルを操作して1つの製品・部品を作り出すものです。操作には技能が必要となります。加工中の音や振動のほか、発生する切りくずの色や形、加工面の状態などをもとに加工条件の適否を判断し、それに対応して加工を行います。一方、NC工作機械は、加工に係わる一連の動作をプログラム(NCプログラム)によって実行する工作機械です。加工を始めると最後まで自動で加工を行うため、プログラムには最適な加工情報を盛り込まなければなりません。
汎用工作機械とNC工作機械の特徴をそれぞれみてみます。
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NC工作機械はNC制御盤と機械本体で構成されます。機械本体の構成についてはNC工作機械の種類によりさまざまです。ここでは代表的なNC工作機械であるNC旋盤、マシニングセンタの構成についてみてみます。
NC旋盤の構成は以下のようになっています。
工作物を回転させる主軸がついている部分で、主軸を回転させるモータと変速機を有します。主軸には通常、工作物を取り付けるチャックがついています。
図1:主軸台代表的なチャックは以下の通りです。
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NC 工作機械には多くの種類があり、その用途は切削加工や研削加工、放電加工、レーザ加工などさまざまです。その種類について、幾つかを取り上げて紹介します。
工作物を回転させて、バイトと呼ばれる工具により切削加工を行う工作機械で、外径・内径旋削や穴加工、溝加工、ねじ加工などを行うことができます。工具切れ刃と工作物が離れずに加工が行われる連続切削となるため、無人加工を行う上では切りくず処理が重要となります。大きな特徴としては、……
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NC工作機械は、加工に必要な情報を盛り込んだNCプログラムを作成し、そのプログラムを実行することにより自動加工を行います。プログラムの作成方法は、マニュアルプログラミングやCAD/CAMシステムなどのソフトウェアを利用したものがあります。NCプログラムについて解説します。
機械図面に描かれた製品・部品をNC工作機械で加工するためには、NCにわかる言葉(NC言語)で、機械動作の情報を細かく正確にNCプログラムの中に入れておくことが必要です。NCプログラムを作成することをNCプログラミングといいます。図1に示すように、NC加工のプログラミング方法は大きく2つに分けることができます。
一つはマニュアルプログラミング方式で、機械図面から加工内容を読みとり、加工工程や使用工具、加工条件、取り付け具などを決定します。そして、電卓などにより、……
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図2は、機械図面から製品が出来上がるまでの流れを示しています。マニュアルでNCプログラムを作成するためには、NC工作機械の仕様をはじめ、加工方法や工具、加工条件に関する知識、加工工程の検討能力などが必要です。また、プログラミング関連では、各種NCコードの意味や指令方法とあわせ、座標系やプログラム構成、最小設定単位などの理解も必要となります。
図2:機械図面から製品加工までの流れ……
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CAD(Computer Aided Design)は、コンピュータ支援による設計と訳され、2次元図面の作成、あるいは 3 次元モデリングを行うソフトウェアです。一方、CAM(Computer Aided Manufacturing)はコンピュータ支援による製造と訳され、CADデータをもとにNCプログラムを作成するソフトウェアです。メインプロセッサとポストプロセッサで構成されています。
まず、メインプロセッサで、……
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NCコードは、NCプログラムに使用される、NC工作機械の動作を決める指令コードです。NCコードで工具やテーブルの回転、移動、移動速度などを指定します。GコードやMコード、その他のコードの意味と具体的な指令方法について解説します。これらのコードにはNC工作機械の種類やメーカに特化したものがあります。ここでは各メーカに共通し、NC旋盤やマシニングセンタで使用されるコードに絞って解説します。
工具の移動を指令するには、アブソリュート方式とインクレメンタル方式の2通りの方法があります。アブソリュート方式(絶対値指令方式)は、工具の現在位置に関係なく、移動させたい点(目的点)をワーク座標系原点からの座標値で指令します。インクレメンタル方式(増分値指令方式)は、工具の現在点から移動させたい点(目的点)までの距離と方向で指令します。
図1は、XY平面図において、……
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プログラム番号とは特定のプログラムを識別するための番号です。アドレスOのあとに4桁以内の番号をあたえ、プログラム先頭に付けます。O8000番台やO9000番台など、メーカや機種によりプロテクト(保護)可能な番号があり、通常編集されたくないマクロプログラムやメンテナンスプログラムなどで使われます。メーカによってはプログラム番号の代わりにファイル名で管理ができる機種もあります。
また、……
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Gコードは準備機能と呼ばれ、指令されたブロックにおける工具の動きやモードを指定します。アドレスGのあとにコード化された2桁の数値で指令します。表2はNC旋盤、表3はマシニングセンタのGコード一覧です。表以外にも、……
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M コードは補助機能と呼ばれ、主軸の正転・逆転・停止やクーラントのON・OFFなど、機械側の個々の機能を制御するコードです。アドレスMのあとにコード化された2桁の数値で指令します。表4にMコード一覧(NC旋盤・マシニングセンタ共通)を示します。表以外にも、……
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NC加工の段取り作業には、工具や工作物の取り付けとあわせて、ワーク座標系原点や各種補正の設定、プログラムの転送(入力)があります。機械の稼働を止めて行う作業なので、すばやく正確に行う必要があります。ここでは、NC旋盤とマシニングセンタの段取り作業に絞って解説します。
図1は機械図面から製品加工までの流れを示しています。NC工作機械の段取り作業は、工具番号や補正番号などの工具情報、工作物の大きさや加工形状、ワーク座標系設定に関する情報があれば、……
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工作物の材質や加工形状に合わせて選定した工具をNC工作機械に取り付けます。NCプログラミングの際に作成したツールリストの工具番号を参照して取り付けます。
NC旋盤について説明します。図2に示すような外径バイトや内径バイトを刃物台に取り付けます。外径バイトはNC旋盤の仕様によりシャンク(柄)の寸法が20mm角や25mm角などがあります。シャンク仕様にあわせたバイトを取り付けると、……
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ワーク座標系原点の設定は、機械座標系原点からシフトさせる量と方向を設定するという考え方になります。したがって、ワーク座標系原点を設定していなければ、機械座標系原点=ワーク座標系原点ということになります。
NC旋盤のワーク座標系原点の設定においては、X軸方向(直径方向)は回転中心が原点となります。Z軸方向(長手方向)については、図8に示すようにP1(製品の仕上がり端面)やP2(生爪端面)、P3(チャック端面)とユーザによって様々です。多くはP1に設定します。P1に設定すると、NCプログラムのZ軸指令値は概ね負の値になりますが、P2、P3に設定すると全て正の値の指令になります。
図8:Z軸方向の原点位置ワーク座標系原点の設定には、工具形状補正を使用する方法とGコードによる座標系設定があります。ここでは……
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NC旋盤では自動刃先半径補正に関する補正値を入力します。機械側はこの値を使ってバイトの補正経路を自動計算します。マシニングセンタでは工具長補正および工具径補正に関する補正値を入力します。工具長補正に必要な工具の長さは、……
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NC プログラムをNC工作機械のメモリに記憶させる方法は、大きく二つに分けることができます。一つはNC操作盤から直接入力(MDI:Manual Data Inputという)する方法と、もう一つはテキストファイル化してソフトウェアなどにより転送する方法です。最近のNC工作機械にはメモリカードやUSBメモリのポートがついているため、比較的簡単に転送ができます。
パソコンとNC工作機械をRS-232CやRS-422、光ケーブルなどのケーブルで接続して転送する場合、使用ケーブルにより転送速度が異なります。また、……
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連続運転に入る前には、プログラムの内容やワーク座標系原点などの補正値に誤りがないか、NCプログラムを実行してチェックします。また、試し加工をおこなうことにより、機械図面の要求を満たす製品・部品が加工できるか、最適な条件が設定されているかなども確認します。プログラムチェックから連続運転までのポイントについて解説します。
作成したNCプログラムや設定した補正値に誤りがあると、工具が工作物や冶具、テーブルなどと干渉して、工具や機械を破損する恐れがあります。そのため、プログラムを実行して間違いがないかチェックを行います。チェックの方法としては、描画機能によるチェックやエアカット(空運転)によるチェックなどがあります。
プログラムチェックを行う際に使用する工作機械のモード選択、NC機能選択、オーバーライドの3つのスイッチについて解説します。図1にモード選択スイッチを示します。NC工作機械の操作をするとき、実行したいことに対して最初に選択するスイッチです。ここでは自動運転およびハンドルモードに関するスイッチのみ解説します。
図1:モード選択スイッチ……
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プログラムチェックの後、1個目を試し加工します。ここで、加工条件の適否をしっかりと判断する必要があります。連続運転に入ってからトラブルが発生すると、時間・コスト面での損失が大きいためです。
NC工作機械はカバーで覆われており、多くはクーラントを用いた加工であるため、加工中の切りくずや火花などはほとんど確認できません。そのため、加工中の音や振動、加工後の刃先の状態や加工品の寸法精度、表面粗さなどで判断する必要があります。主軸負荷ロードメータを確認することもあります。
NCプログラムの各工程間にM01を入れておき、オプショナルストップスイッチを有効にしておくと、それぞれの工程後に加工状態が確認できます。また、……
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試し加工を行い、NCプログラムや加工条件、各種補正値に間違いがなければ連続運転に入ります。同じ工具で長時間加工していると工具が摩耗するので、不良品が発生しないように、定期的な寸法チェックが必要です。
機械図面に指示された寸法公差を外れる前に摩耗補正で調整、あるいは工具を交換します。工具寿命管理については、……
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製品・部品の加工精度を安定させるためには、工作機械の精度(静的精度・動的精度)が高く、安定していなければなりません。加工時の抵抗に負けて変形しない剛性も必要です。工作機械がこれらを満たしていても、使い方により加工精度が得られないことがあります。工作機械を設置する環境も一つの要因です。設置場所の基礎が薄いと地盤沈下などで工作機械の姿勢が変化することがあります。近くにプレス機械などがあると、振動により加工精度に影響を与えることもあります。空調設備の吹き出し口が近くにあっても姿勢変化の原因となります。
また、工作機械の主軸や各移動軸は……
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ナビゲーションリスト
もくじ 第1回:NCとは 第2回:NC工作機械の種類とその特徴 第3回:NCプログラム 第4回:NCコード 第5回:NC加工の段取り作業 第6回:プログラムチェックから連続運転までのポイントカテゴリー
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