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スーパーに食料品や生活用品を買いに行くと、値段が上がった気がする。値段は変わってないけど、中身が少なくなった気がする。最近、企業が値上げを発表するニュースを目にします。なぜ、急に企業が値上げに踏み切ったのか。今回は“日本人の国民性”の観点から、その現状を経済評論家の森永康平さんがひもときます。【写真】どのくらい値上げを許容するか“消費者心理”が見えてくるデータ
世界的に物価が上昇しています。日本でも冒頭に書いた通り、徐々に値上げラッシュが起き始めているものの、諸外国の物価上昇に比べればまだ弱いレベルです。この世界的な物価上昇の理由のひとつは原油などのエネルギー価格の上昇がありますが、そうであれば日本の物価も、諸外国同様に上昇してもいいはずです。しかし、日本の物価上昇はこれまで企業努力によって小幅にとどまっていました。原材料価格が上昇しても、すぐに企業が価格転嫁をして値上げをすると、消費者が買ってくれなくなる恐怖心から、値上げがしづらかったのです。その代わりに、コストを削減するなどの企業努力によって原材料価格の上昇分を吸収していました。そうであれば、今回もまた値上げせずに企業が自助努力で値段を据え置くはずなのに、なぜ今回は各社が値上げに踏み切ったのでしょうか。いくら自助努力といっても限界がありますから、遂に我慢の限界にきた。これもひとつの理由でしょう。しかし、それ以上に大きな理由があると考えます。
連日メディアでは「インフレ」や「スタグフレーション」という言葉を用いて、物価上昇の特集を組んでいます。家計に直接影響する話なので、視聴率やPV(ページビュー)を獲得しやすいからです。その結果、何が起きるのか、公開されているデータから確認しましょう。内閣府が発表している「消費動向調査(消費者が予想する1年後の物価の見通しの推移)」を見ると、昨年から「1年後には物価が上昇する」と予想する消費者が急増しています。つぎに消費者庁が発表している「物価モニター調査」を見てみると、食品などの生活関連物資等の値上げについて、現在の状況を考慮すれば「しかたない」と考える消費者が8割以上もいることが分かります。連日、諸外国では物価が上昇していることや、その理由は原油価格などのエネルギー価格の上昇が原因だと同時に報じられることにより、消費者側が“値上げを予想”するようになり、かつ、それは「しかたがない」と受け入れる状況になってきたのです。これは企業からすると値上げがしやすい環境になりますから、徐々に値上げをする企業が出てきます。すると、それを見た他の企業も追随するのです。このように、日本人は空気に支配されやすいため、最初は企業が耐え続けるものの、次第に空気が醸成されてくると、一気に値上げラッシュということになるのです。ただ、どこまでも物価が上昇し続けるわけではありません。なぜなら、あまりにも物価が上昇すれば需要が激減するからです。つまり、これから先の予想をするためには、私たちの賃金がどう上昇するかがカギになってきます。この話はまたの機会にしたいと思います。参考/内閣府「消費動向調査<令和3(2021)年12月実施分>」、消費者庁「令和4年1月物価モニター調査結果(速報)」
森永康平
最終更新:CHANTO WEBカテゴリー
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