無線LANのトラブルをできるだけ迅速、確実に解決するスキルを身に付けるには、まず無線LANのネットワーク構成や主要規格の特徴といった基礎を理解することが重要だ。
それによって、トラブルの発生場所や原因を特定しやすくなる。基礎を押さえたら、次はよくある無線LANトラブルについて、原因と対処法を覚えておくとよい。
そこで本特集では、まず無線LANのトラブルシューティングに必要な基礎知識を解説する。トラブルの原因となり得るポイントについても触れる。
次回以降では、トラブルシューティングの手順やツールについて簡単に触れたあと、具体的な事例に基づく原因と対処法を取り上げる。
無線LANを導入した企業ネットワークの構成を見てみよう。無線LANの基本的な構成要素は、親機である無線LANアクセスポイント(AP)と、子機であるクライアントの2種類。
無線LANを使ったネットワーク構成の例[画像のクリックで拡大表示]APは無線でクライアントからの接続を受け、有線ネットワークへ橋渡しする役割を担う。クライアントにはパソコンやスマートフォン、タブレットのほか、様々なIoT(Internet of Things)機器などがある。
ルーター機能を備えたAPである無線LANルーターとクライアントで構成するのが、最もシンプルな無線LANネットワークだ。この構成は小規模な拠点でよく見られる。無線LANを導入している一般家庭でも、こうした構成を採っていることが多い。
APが数十台以上と規模が大きいネットワークでは、APを一元管理する無線LANコントローラー(WLC)という装置を導入するのが一般的だ。
もともとはアプライアンスだったが、最近はクラウドサービスとして提供される場合もある。このほか、クライアントを認証するための認証サーバーを導入することがある。
一口に無線LANといっても、様々な規格がある。伝送速度が引き上げられた新規格が数年ごとに作られているが、古い規格は廃止されるわけではなく混在している。
無線LANの規格は米国の標準化団体であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)傘下の「IEEE 802.11作業班(WG)」で策定される。
これまでに作られた主な無線LAN規格を以下の表に挙げた。
無線LAN規格の比較[画像のクリックで拡大表示]現在の最新規格はIEEE 802.11axである。最大伝送速度は9.6Gビット/秒と当然ながら最速だ。
ただ、前の規格であるIEEE 802.11acからの伸びはそれほど大きくない。1チャネル当たりの速度向上よりも、多数の端末を収容したときの伝送効率の向上を主眼に置いて作られたからだ。
IEEE 802.11axが正式に承認されたのは2021年に入ってからとつい最近のことである。既に多数のIEEE 802.11ax対応製品が市場に出回っているが、これらはドラフト版の仕様をベースに作られたものだ。
業界団体であるWi-Fiアライアンスは「Wi-Fi 6」という名称で、IEEE 802.11axのドラフト版に対して相互接続性の認定試験を実施している。
ただ、認定ロゴを取得した製品同士であっても、出たばかりの新しい規格の実装はバグやメーカーの解釈の違いが存在し、うまく接続できないケースがある。これがトラブルシューティングの際のポイントとなる。
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