508、208、3008、5008に採用され、プジョーの新しい顔として、定着しつつある、ライオンの牙(セイバー)をモチーフにした縦型のデイタイムランニングライト。
プジョーの躍進を象徴するのがこの牙だが、もちろんそれだけにとどまらない。エクステリアデザインやコクピットのデザインはもちろん、パワートレインまでもが大幅に進化しているのだ。きっと輸入車ファンのなかにも「プジョーが最近凄い!」と感じている人も多いことだろう。
そんななか、もう間もなく4月に発売されるという、新型プジョー308に注目。はたして、新型プジョー308はどんなモデルなのか、モータージャーナリストの大音安弘氏が解説する。文/大音安弘写真/ストランティスジャパン、ベストカーweb
【画像ギャラリー】研ぎ澄まされた牙でライバルに喰らいつけ!! より精悍に生まれ変わった新型308とプジョーファミリー(22枚)画像ギャラリー最近、街角でプジョーを見かける機会が増えてきたと感じている人もいるのではないだろうか。その理由のひとつには、ドラスティックな変化を遂げたモダンなデザインが目を引くが、近年の販売台数も着実な成長を遂げているのだ。
JAIA発表によると、2021年のプジョー車の登録台数は、1万2072台を記録。10年前の2011年は6137台だったから約2倍まで拡大している。さらに2012年と2013年に登録台数が減少したものの、2015年以降は、成長を続け、2019年以降は1万台を突破している。
2015年以降の躍進のカギは、商品力のアップが大きい。ゴルフと競える性能と内容にアップグレードされたCセグメントカー「308」のフルモデルチェンジモデルの販売が本格化したほか、コンパクトハッチ「208」とコンパクトSUV「2008」のガソリン車のパワートレインが、308譲りの1.2L直列3気筒ターボとアイシン製6速AT「EAT6」に換装され、走りも格段に良くなったことがある。
それまでの1.2L直列3気筒DOHCエンジンは非力なうえ、トランスミッションが旧式の4速ATで、一時、シングルクラッチの5速AMTに換装されたこともあったが、いずれも日本市場に好ましいものとは言い難かったからだ。
このパワートレインの変更で、208と2008は正当な評価の対象と成り得たといえよう。さらに2017年には、「3008」のフルモデルチェンジと共にミニバンから転身した「5008」の2台のSUVを投入し、人気のSUV市場へのアプローチも積極化させた。
施策のひとつとしては、輸入車ユーザーに人気の高いクリーンディーゼルターボの積極的な展開も行ってきた。ハイオクのみの輸入車だけに、燃料費が抑えられ、より力強い走りも楽しめるディーゼルは好意的に受け止められている。
2021年の販売のけん引役といえるのが、2020年にフルモデルチェンジを遂げた新型「208」と新型「2008」の存在だ。販売が本格化した2021年のプジョー販売の一位が208で全体の28%を占める。
その後、21%の2008、16%の3008と続く。これらには、電動車も追加されており、EVの「e-208」が208全体の10%、EVの「e-2008」が2008全体で13%を占めており、輸入車全体で1%程度と言われる日本のEV販売の現状を考慮すると、EVエントリーの役目を果たしていることが受けとれる。
また3008のハイブリッド車「3008 HYBRID4」は、プジョーライン唯一の4WD車ということもあり、3008全体の15%を占めている。
またプジョーのスタンダードカーとして活躍してきた現行308もモデル末期にありながら、販売全体の11%を占めており、日本の輸入車ユーザーのCセグメントカーのニーズの大きさを実感させる。
2022年の計画では、2021年同様に、208と2008を販売のけん引役として定め、それぞれが25%前後を目論む。さらに好調の3008が15%ほどを占め、今年登場予定の新型308が20%弱としたいとしている。つまり、新型308には、プジョーとして大きな期待をしているのだ。
導入目前に迫るフルモデルチェンジモデルの新型308は、最新プジョーデザインを纏い、劇的な変化を遂げる。プラットフォームは、現行同様に「EMP2」だが、その進化版で、電動化対応も可能なものだ。
既存のEMP2が幅広い車種に使われていることからも分かるように柔軟性を持つもので、それは新型のボディサイズにも反映される。ただし、現時点では308の電動車は、プラグインハイブリッドのみとなることを付け加えておく。
ボディサイズは、ハッチバックモデルの場合、全長4367mm×全幅1859mm×全高1441mmで。ホイールベースが2675mmとなる。ワゴンのSW場合は、全長4636mm×全幅1852mm×全高1442mmで、ホイールベースが2732mmとなる(※共にフランス本国のカタログ値)といずれもサイズアップを図る。
現行型308は、ハッチバックが全長4275mm×全幅1805mm×全高1470mm、ホイールベース2620mm。ワゴンSWが全長4600mm×全幅1805mm×全高1475mm、ホイールベース2730mmなので、ひと回りほどのサイズアップになるようだ。
さらにいえば、ライバルとなるゴルフVIIIと比較しても大きいため、存在感を増すだけでなく、同時に快適な車内空間の提供にも繋がるのは朗報だ。しかし、懸念されるのは車幅と駐車場とのマッチングだろう。
物理的なボリュームだけでなく、視覚的にも劇的な変化を迎えるのが新308シリーズの特徴。ボディサイズの変化が示すように、よりワイド&ローのスタンスが強調されている。
そのなかでも特に印象的なのが、フロントマスクのデザイン。最新世代に使われる立体的かつグラフィカルなデザインのフロントグリル、ライオンの爪痕を彷彿させる鋭いデイランプ、切れ長のLEDプロジェクター式ヘッドライトなどの最新世代のアイコンを凝縮する。
そのなかで新たな象徴となるのが、新デザインのプジョーエンブレムだ。
すでにブランドアイコンとして使われる新エンブレムだが、市販車への搭載は、新308が初となる。グリルとの一体感を出すために、グリル加飾がエンブレムを中心にデザインされているので、より印象にも残る。
この大人の手のひらほどの大きさもあるエンブレムは、単なるアクセントではなく、その背面にミリ波レーダーが内蔵されており、プジョーの先進の安全運転支援機能を支えるキーのひとつとなる。
このアイデアは、大型化したグリルを際立たせるべく、ナンバーをグリル下に配置するデザインを成立させるものでもある。
海外の幅広のナンバープレートだと、グリルに干渉せず、新デザインの美しさを強調しているのがポイント。ただ日本のナンバーだと、グリルとバンパーを結ぶデザインが隠れてしまうのは残念だ。
未来的なデジタルメーターと小径ハンドルが象徴的なプジョーの「iコクピット」も大きく進化を見せる。より視界を良くするために、オンダッシュだったインフォメーションシステムのモニターがダッシュボードの中央に移動。
さらにメーターフードとエアコンルーバーを一体デザインとしてラウンドさせることで、ワイド感を演出している。
新インフォメーションシステムも注目すべきポイントで、メインモニターの下にショートカットキー用のサブパネルを備えている。この最新インフォメーションシステムは、なんと本国のナビゲーションが日本で使用できる初のシステムとなる模様。
他の新型モデルを含め、現状では日本製ナビゲーションシステムとの切替で対応しているだけに、より操作性も高まる予感。ナビのグラフィックスデザインを含めて、注目したい。
新ATシフトレバーも、他モデルのバイワイヤーの大型シフトレバーから、センターコンソール周りのスペース効率を高めるコンパクトなレバー式に切り替わり、すっきり。日本には導入されることはないだろうが、本国ではしっかりとMTも用意される。
そのデザイン上の違いはなく、そのスペースに小物入れの代わりにMTシフトが備わる程度。基本的なデザインに大きな変化はなく、いずれも電動パーキングブレーキ仕様となる。トグル式ATレバーについては、2022年3月発表の改良型2008でも採用されるが、そのデザイン性は、308のほうが勝る。
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