紙媒体による出版業界を大きく揺るがしているのがインターネットの存在だが、同時にそれを紙代わりのインフラとして用い、デジタルによる書籍の提供・販売を行うことで、時代の流れに乗る動きもある。スマートフォンをはじめとするインターネットの窓口となる端末が急速に普及する昨今、子供達の間に電子書籍はどこまで浸透しているのか。今回は内閣府が2021年3月に報告書を発表した「令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の内容から、小中高校生における主要なインターネット接続端末を用いた、電子書籍の利用状況を確認する。
次に示すのは主要なインターネットへの接続可能媒体でインターネットを利用している人における、電子書籍の利用状況。設問表では「何をしているか」の対象として「電子書籍」とのみ記述され、具体的な説明は無い。厳密には電子書籍と電子雑誌は別物扱いされることが多いが、今件状況では「インターネット上で読める本や漫画、雑誌など」すべてを対象としていると判断し、回答したものと見た方が間違いはない。また有料・無料の別の設定もないため、単純に閲読しているか否かを答えてもらったものと見なす。
なお一部属性で空欄の部分があるが、その属性では回答者自身が存在しないことを意味する。
パソコンではほとんどの属性で1割に満たない値。女子中学生のデスクトップパソコンだけが1割を超えている。
タブレット型端末は小学生ではデスクトップパソコンとあまり変わりはないが、中学生以降では大きく差が開く。学習用タブレットは小学生ではパソコン、さらにはスマートフォンすら超える値を示しているが、中高生ではスマートフォンとさほど変わらない値。他方スマートフォンでは中学生で1割台、高校生になると1/4強。スマートフォンを使ってインターネットを利用している高校生のうち1/4強は電子書籍を利用している計算になる。
インターネット利用端末の利用者における電子書籍の利用状況としては、スマートフォンがトップ、学習用タブレットとタブレット型端末が続くといった具合。また中学生から積極的に読み進められ、高校生ではスマートフォンで1/4強の閲読率を示している。
しかしこれは該当端末でのインターネットの利用者限定。電子書籍の現状を把握するためには、むしろ各属性毎の利用状況を知りたいところ。そこで各属性における電子書籍利用比を算出した結果が次のグラフ。例えば総数のスマートフォンは11.8%の値が出ているので、小学生から高校生を合わせた全体のうち11.8%、10人に1人強はスマートフォンで電子書籍を利用していることになる。
元々各該当端末によるインターネット利用率が低い小学生は、誤差の範囲に収まる利用率しかない。実質的に「読んでいる人はナシ」と見ても構わないレベル。中学生になるとスマートフォンやタブレット型端末では利用率の高さが後押しする形でそれなりの値を示す。
そして高校生。スマートフォンそのものの利用率が圧倒的な値を示していることから、それを用いた電子書籍の利用者率もグンと跳ね上がる。高校生全体の26.2%、およそ4人に1人はスマートフォンで電子書籍を閲読している計算になる。タブレット型端末の場合は50人に1人。
今件調査は小学生から高校生を対象としたものであるため、当然大学生以上の大人の動向は把握できない。ただ、例えば総務省の通信利用動向調査によれば2015年末時点でインターネット利用者に限定した場合、男性40代でも8.0%に過ぎないとの結果が出ている(2016年分以降の調査では該当項目は存在しないので、これが最新値)。
調査様式が異なるため単純比較はできないが、高校生のスマートフォンによる電子書籍の閲読意欲は相当高いと見てよいかもしれない。
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※令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査
2020年11月5日から12月13日にかけて2020年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(困難な場合は訪問配布訪問回収法も併用。保護者は訪問配布訪問回収法が原則)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法を併用している。有効回答数は青少年が3605人(うちウェブ経由は388人)、保護者は3633人(うちウェブ経由は421人、郵送回収法は180人)。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。
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