グローバルでの発売が始まり、早くも人気が高まっているサムスンのGalaxy S8/S8+。縦長でスリムなディスプレーの採用や、側面から背面にかけても美しいシンメトリーなデザインなど、従来のGalaxy Sシリーズのエッセンスをさらにブラッシュアップしたモデルになっています。Galaxy S8 / S8+はどのようにして生まれたのか、韓国のスウォンにあるサムスン電子本社で開発者に話をうかがいました。
グローバルで発売になった「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」
まずは、他社のスマートフォンには見られない、縦長のディスプレーの採用の理由について。サムスン電子のグローバル商品企画グループ、チェ・スンミン氏(シニア・プロフェッショナル)によると「まずはGalaxy Sシリーズの新しいモデルを生み出すことから考えた」とのこと。
Galaxy S8/S8+のデザインコンセプトは「インフィニティ・ディスプレイ」。既存の枠を超えた、無限の可能性を実現するスマートフォンを目指したといいます。
過去のGalaxy Sシリーズを振り返ると、2年前に投入されたGalaxy S6/S6 edgeがそれまでのモデルを一新する、フルモデルチェンジの製品でした。そして、1年前のGalaxy S7/S7 edgeは、S6シリーズがユーザーから高い評価を受けたことによりデザインコンセプトはそのままとし、microSDカードを利用可能にするなど、機能の強化をはかりました。
Galaxy S8/S8+はS6シリーズが出て2年目であり、ユーザーからも新しい製品を求める声が高まっていました。いまやどのスマートフォンもデザインは類似したものになっています。従来にはないデザインを実現するためはどうするか、というところから開発に入ったそうです。
グローバル商品企画グループのシニア・プロフェッショナル、チェ・スンミン氏(左)とヤン・ヒョニョン氏(右)
外観を変えるためにはどうするか。その答えのひとつが「いまの端末のサイズのまま、より大きい画面を欲しい」というユーザーニーズだったとのこと。
いまやスマートフォンで誰もが動画を見る時代になっていますが、ハリウッド映画の21:9のコンテンツをより見やすくするためには、16:9のアスペクト比からワイドなサイズにするほうが有利という結論になったとのこと。その上で18.5:9という、細長いディスプレーの採用が決まりました。
チェ氏によると、今後はこのタイプのディスプレーが市場では主流になっていくだろうとのこと。
映画に限らず、SNSのタイムラインを見る「リストビュー」のスタイルなど、スマートフォンのディスプレーは縦長、あるいは横長な形状がトレンドになりつつあるとのことです。しかもこの形状であれば大きい画面と持ちやすさを両立できるのです。
とはいえ、ちょっと心配なのはディスプレーの強度。Galaxy S8/S8+はほぼベゼルレスなデザインになっています。
これについてもチェ氏は「既存の端末と同じ強度を保っており、ゴリラガラス5の採用で強度をアップ。さらにエッジ部分は特殊なコーティングもかけている」とのこと。むしろ、これまでの機種よりも持ちやすくなったために、落下の心配も低減されるでしょう。
一方で、Galaxy Sシリーズの「顔」とも言える、ホームボタンが廃止されました。この点については「最後まで廃止すべきか悩んだ」(チェ氏)とのこと。
ただし、ディスプレーの下部中央にソフトキーではなく感圧センサーを内蔵し、ホームボタンとしての使い勝手は従来機種と同じものを実現したといいます。
ホームボタンはディスプレー下部中央に感圧センサーを埋め込んだ
この本体デザインの設計のベース思想は、サムスンの製品デザイン1グループが担当しています。キム・ユンジン氏(シニア・デザイナー)によると、ベースデザインの設計は、サムスンの各国にあるデザインセンターや市場のデザイントレンドを調査した結果から生まれたとのこと。
それによるといまの時代は「モノや情報に溢れており、人々は逆に何も持たない、Light and Pureを求めている」傾向にあるそうです。
いまや情報伝達が発達し、情報の共有という面では物理的な距離感というものは無くなっています。性別や年齢、人種の間にもギャップは存在しなくなりつつあります。
このような背景から新製品のデザインフィロソフィーを「Neutrality」すなわちバランスと考え、あらゆるユーザーが使いやすいデザインが考えられました。
製品デザイン1グループ、シニア・デザイナーのキム・ユンジン氏(左)とパン・ヘジン氏(右)
スマートフォンとは本来、ディスプレーに情報を表示するデバイスです。使いやすさとはその本質を追求することであり、ディスプレー面は「見ること」に集中できるようなデザインとなっています。
16:9の画面時の縦方向の上下の空間やホームボタンは、ディスプレーデバイスとして考えると無い方がいいものです。カメラ周りのセンサーなどもなるべく目立たなくした方がディスプレーに没入できます。
そして、手に持った時に持ちやすい、この点も重要です。グリップ感を高めるために、側面に向けてゆるやかなカーブを描く形状や、側面のメタル素材とディスプレーのガラス素材をギャップの無いように一体化させるなど、100台以上のプロトタイプをつくって最終的な形状を決めたとのこと。
パン・ヘジン氏(シニア・デザイナー)によると本体の断面も対象的なバランスを取るために、リキッド・シェードというコンセプトで、2つの素材を1つに合わせ、素材の奥深さを実現したといいます。水が流れるような仕上げは、Galaxy S8/S8+のデザインコンセプトである「インフィニティ・ディスプレイ」そのものです。
水が流れるようなデザインで美しさと持ちやすさを両立
また、Galaxy S8/S8+の本体カラーも調和を考えた独特の色合いになっています。一体感を重視したミッドナイト・ブラック、水が流れるようなアークティック・シルバー、青の色を再分析したコーラル・ブルー、落ち着いた色合いのオーキッド・グレイ、そしてメイプル・ゴールドの5色展開が予定されています。
このうちオーキッド・グレイは落ち着きのある灰色に紫を加えた独特の仕上げ。落ち着きがあり、神秘的で、トレンディーでもあるこの色は、女性が憧れるような仕上げにもなっており、今後サムスンのユニークなカラーとして採用が進むだろうとのことです。
なお、過去のモデルは後からピンク系のカラーバリエーションが加わりました。S8/S8+で最初にピンクが投入されないのは、本モデルのデザインフィロソフィーに合わない部分があるからとのこと。ただし、市場ニーズがあれば追加カラーも検討しているそうです。
本体カラーは調和をイメージした落ち着き有るものに
ところで、本体下部には3.5mmのヘッドフォン端子が備わっています。調和や新メトリックなデザインを考えると、この部分は廃止したほうがいいようにも思えます。
しかし、キム氏によるとユーザービリティーを第一に考えたとのこと。ヘッドフォン端子廃止は、むしろユーザーにとって端末の使い勝手をスポイルしてしまうものと考えているわけです。
さて、過去のモデルは、エッジディスプレーと標準ディスプレーの2つの形状のモデルが登場しました。しかし、Galaxy S8/S8+は大画面を優先し、そして、市場ではコンパクトなサイズのニーズもあることから、どちらもエッジディスプレーを採用しています。
また、安全設計はより強化されているとグローバル商品企画グループのヤン・ヒョンヨン氏(シニア・プロフェッショナル)は説明しました。
最後にカメラについて。Galaxy S7シリーズと大きな変化が見えないように見えますが、チェ氏によるとGalaxy S8/S8+ではマルチフレーム撮影機能を加えるなどして、暗いシーンでの撮影を強化するなど性能を高めています。
なお、デュアルカメラの採用に関しては、一番美しい写真を撮るには必要かどうかを検討した結果、今回は採用を見送ったとのこと。
フロントカメラは画質アップ。リアカメラも性能を強化
そして、最近流行になりつつあるセルフィー機能については、正面カメラを500万画素から800万画素にアップ。また、ステッカー機能を標準搭載し、あとからアプリを入れなくても、買ってすぐにセルフィーを楽しめるようにしたと言います。
Galaxy S8/S8+のデザインは、ユーザーニーズのトレンドの先読みと使いやすさから生まれたものであり、これまでのスマートフォンには無かった使い勝手の高さを実現しています。
1年ぶりのフラグシップモデルということもあり、サムスンの開発力を全て投入したと言える製品に仕上がっています。今年の春夏モデルの中で、最も注目される製品と言えるでしょう。
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無限の可能性を実現するインフィニティ・ディスプレイホームボタンの廃止は最後まで悩んだ 「見ること」に注目したデザインは現代に必要なもの Galaxy S8は5色のカラーバリエーション気になるピンクなどの追加色は「市場によって検討」 ユーザービリティーを第一に設計3.5mmジャックやカメラ機能も強化カテゴリー
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