「NoOps」とは、「運用をなくす」「運用負荷を軽減する」といった意味を包含する。前編「Netflixに学ぶ『NoOps』が目指すべき姿とは?」に続き、NoOpsでIT運用の何が変わるのかを紹介する。
自動化によるNoOpsを考える上での疑問は、運用チームとNoOpsの関わり方だ。システムの自己修復によって解決した状況を、運用チームが把握する必要はあるのだろうか。仮に自己修復に失敗する状況が発生する場合、アラートを受けて運用チームが対処する必要はあるのだろうか。
100%のシステム稼働率を維持している企業はほとんどない。それを前提にすれば、仮に自己修復に失敗する状況が発生しても、「運用スタッフは関与しなくてもよい」と判断する企業もあるだろう。
運用チームの業務には、ユーザーのアカウント管理やヘルプデスクといったタスクもある。こうした業務には自動化が難しい領域もある。従業員の採用や異動、退職に伴うアカウントの管理は自動化することが理想だ。だが新人研修など常に人間の関与が必要になる業務もあり、これはスクリプトだけでは処理できない。
ヘルプデスクは運用チームの業務の中でも、特に人間による関与が必要になる。企業によっては従業員へのサービス部門が、運用チームとは分離している場合もある。とはいえ本来これら2つの業務は密接に結び付いており、ヘルプデスクの管理を運用と完全に切り離して考えることは難しい。
システム運用にできる限りクラウドサービスを利用する「クラウドファースト」の方針を採用している企業もある。ベンダーが「As a Service」として提供するクラウドサービスの機能が充実していれば、企業は運用の負荷を大幅に削減することが可能だ。企業の運用チームが、システムの設計や開発に一切関わらなくてもよくなる可能性もある。
ただし利用しているクラウドサービスに十分満足し、完全にベンダーを信頼している企業はほとんどない。クラウドベンダーとの関係は時間の経過とともに変化する可能性もある。利用するクラウドサービスが5年前には安定して稼働していたとしても、その後にサービス停止を繰り返すようであれば、もはや信頼することはできなくなる。
そのためクラウドサービスの利用によって運用の業務負荷を軽減する一方で、ベンダーとのコミュニケーションやその他の協力企業との連携を重視するようになる運用チームもある。運用チームはヘルプデスクを通じてエンドユーザーや事業部門の責任者とコミュニケーションを取ることで、業務全体が適切に機能しているかどうかを把握できる。
クラウドサービスを利用する運用チームは、CPUの処理速度やストレージ容量、メモリ容量といったハードウェア面の心配をする必要はなくなる。一方では新たに担わなければならない業務も出てくる。例えばクラウドサービスを適切に運用するために、クラウドサービスの管理ツールを最大限に活用することが重要になる。
クラウドサービスへの移行によって運用負荷は軽減するだろう。これは単純にNoOpsによる成果だと捉えることもできるが、別の問題を提起する話でもある。その問題とは、ITに関わる業務全体が、そもそもNoOps(運用なし)の状態を前提にはしていないことだ。ハードウェアの障害はほとんど開発者側の責任と見なされることはないし、プログラミングに起因するエラーにエンジニアが対処することもほとんどない。運用上の問題解決を運用チームに任せることを前提にしている点に問題がある。NoOpsを目指す上ではそうではなく、よりシステム運用全体の利益につながるように、運用チーム以外のITチームも問題の責任を担うという考え方が重要になる。
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