いまや多くの家庭や企業にWi-Fiが導入されているが、一方で、「インターネットの接続状態が悪い」「思っていたより速度が遅い」といった、Wi-Fiのつながりづらさを経験した人もいるだろう。
それらの原因は「Wi-Fiルーターの設置場所」の可能性がある。実はWi-Fiの電波は、建物や家具などに影響を受けやすいのだ。
その特性を知り、適した場所に置けば、その能力を存分に発揮することができる。では、Wi-Fiの設置に適しているのは、具体的にどんな場所なのだろうか?
KDDIのWi-Fiホームルーター商品企画担当者に話を聞いてみた。
左から、KDDI商品企画本部 プロダクト企画部の田村啓、王ジェリー、佐々木嘉彦――まず、Wi-Fiルーターはいくつ種類があるのでしょうか。自宅に置く光回線のWi-Fiルーターや、持ち歩けるモバイルルーターなど、ルーターと言ってもいくつか種類があるように思います。
「Wi-Fiルーターには、光回線などの固定回線を使う『無線LANルーター』、携帯電話会社の無線回線を使う『ホームルーター』、さらに持ち歩くことができる『モバイルルーター』の3つのタイプがあります。
タイプ別のWi-Fiルーター接続例 左のスマホのような薄いものがモバイルルーター、右の2つがホームルーターこのうち、ホームルーターとモバイルルーターは携帯電話と同じく、基地局を介してインターネットにつなぐ方式です。だから部屋に設置するときは、基地局の電波がしっかりと届きやすい窓際付近が適しているといえます。
基地局の電波をつかんでいるかどうかがポイント一方、光回線など固定回線を使う無線LANルーターでは、ケーブルを経由してインターネットにつなぐ方式のため、窓際に置く必要はありません」
――なるほど。たとえば、ホームルーターやモバイルルーターを使用している人で、窓際にスペースがない場合はどうすればいいですか?
「窓際に設置スペースがない場合は、外から見通しの良い場所などに設置していただければ大丈夫です。最近では、『基地局からの電波がルーターにどれくらいの強度で届いているか』をスマホアプリでリアルタイムかつ0〜12の13段階で確認できるモバイルルーターやホームルーターもあるので、適切な設置場所を簡単に探すことができます」
ルーターの電波受信状況をスマホでも確認できる――インターネット向けの回線については分かりましたが、自宅のWi-Fi電波の接続状態が悪い原因はなんでしょうか?
「Wi-Fiルーターと接続端末をつなぐWi-Fi電波は、間になにもなければ100m程度飛びますが、一方で遮蔽物の影響を受けやすいという特性があります。この問題は、無線LANルーターを含めたすべてのタイプのルーターが該当します」
最新のホームルーターにはいろいろな機能がある――どんなものがWi-Fi電波の障害になるのでしょうか?
「あらゆるものが大なり小なりWi-Fi電波に影響を与えていますが、特に金属や水、コンクリートなどはWi-Fi電波の広がりを邪魔してしまう存在です。たとえば水槽の近く、金属製のラックの中、コンクリート製の壁の角といった場所に設置をすると、Wi-Fiの届く範囲が制限される可能性があります」
――結構、「置きがち」な場所が多いんですね……。
「さらに言うと、電子レンジやIHヒーター、Bluetooth機器といった家電製品は、Wi-Fiの周波数帯と同じ2.4GHzの周波数を使用しています。近くで使用していると影響を受けてつながりにくくなったり、通信速度が落ちたりすることもあります」
――電子レンジについては確かに心当たりがありますね!
「Wi-Fi電波には以下の図にあるように、2.4GHzと5GHzの2つの周波数があります。Wi-Fiルーターは切り替えができますので、それぞれの特徴を見て、最適な周波数でお使いいただくことをおすすめします。また、ルーターの機種によってはWi-Fi電波の品質を見て、自動で2.4GHzと5GHzを切り替えてくれる 「バンドステアリング」という機能を持ったものもあります」
――Wi-Fi電波は意外とデリケートなんですね。では、Wi-Fiルーターの理想の設置場所を教えてください。
「ポイントは2つあります。ひとつは、Wi-Fiルーターを床から1~2m程度の高さに設置すること。接続するWi-Fi端末がどこにあるか分からないので、基本的にWi-FiルーターはWi-Fiルーターを中心として360°、球体状に電波を飛ぶように設計されています。そのため、床に置いてしまうとその広がりを無駄にしてしまうことになってしまいます。
もうひとつはできるだけ家の中心の場所、もしくはよく利用する部屋にWi-Fiルーターを設置することをおすすめします。最近のWi-Fiルーターはアンテナ性能が向上し、かつルーター自体がスマホやタブレット位置を検知して、集中的に電波を送信してくれる「ビームフォーミング」という新機能が搭載しているモデルもあります」
――Wi-Fi電波が球体状に飛んでいるということは、2階建ての家の場合、2階に置いておけば家全体に効率的に電波が届けられるということですね。
「とくに木造建築の家屋の場合は、そういうことになります。1階の高い位置に置いておくのも同様です。鉄筋コンクリート製の家屋の場合は、コンクリートがWi-Fi電波の遮蔽物になるので、市販されている中継機を使うことで繋がらなかった部屋にもWi-Fiのエリアを拡大できることもあります」
――ルーターの設置箇所ひとつでずいぶん改善できそうですね。早速試してみたいと思います。本日はありがとうございました。
Wi-Fiルーターは導入してしまうとその便利さがゆえ、その存在自体がつい無関心になりがちな機器でもある。しかし、ルーターの特性を知り、設置箇所を見直すだけで、Wi-Fiの通信環境が少しでも改善できるというなら、試してみない手はなさそうだ。この記事でWi-Fi環境が少しでも改善できれば幸いである。
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