パソコンやテレビ、スマートフォンなどで視力を落とさないようにするにはどうしたらいいのだろうか |
現代社会はさまざまな映像コンテンツを楽しめるアイテムがあふれている。テレビは当然のように各家庭に置かれているし、携帯電話も大半の人が持ち歩いている。また、パソコンやタブレット端末なしでは、私たちの仕事は成り立たなくなっているといっても差し支えないだろう。
ただ、手軽にそれらのアイテムを利用できるようになった反面、私たちの目が酷使される機会も増えてきたとも言える。仕事でパソコンを使い、休み時間や移動時間にスマートフォンをいじり、帰宅後はテレビを見る……。そんな生活が続けば、子供はもちろん、大人でも視力低下を招きかねない。
それでは、これらの映像コンテンツを楽しめるアイテムとはどのように付き合ったらいいのだろうか。あまきクリニック院長の味木幸医師に映像機器との"健全な付き合い方"について伺った。
パソコンや携帯型ゲーム機などの映像機器が今のように普及していない20年ほど前は、視力低下に伴う近視は20歳前後を一区切りとし、それ以降は症状が進まないと考えられていた。
「ですが、今は例えば20代、30代で近視化が進む人や、老眼・白内障が進む世代で近視化する人が出てきています。パソコンのように近くを見てする作業の『量』と『時間』がかつてと全く異なるため、大人になっても近視化が進んでいるということが一つの原因として考えられます」。
パソコンやスマートフォン、携帯型ゲーム機などを近い距離で長時間使用していると、目の中にあるピントを合わせるための「毛様体筋」が常に緊張しつづける。この状態を「調節緊張」(仮性近視)と呼び、子供の近視の原因となる。
起床時や午前中などの「目が元気な状態」では鮮明に見えていた時計の時刻やカレンダーが、パソコン作業を終えた夕方ごろにはぼやけて見えるといった状況が調節緊張に当てはまる。
毛様体筋は遠くのものを見るときは弛緩(しかん)しているが、近くのものにピントを合わせる際は逆に緊張するという特徴がある。常にパソコンと向き合っているような状況下では、毛様体筋がかっちり固まってしまうため、数時間後には遠くのものが見えなくなり、一時的な視力低下状態に陥る。そのようなことを繰り返しているうちに、常に近視という形になってしまうというわけだ。
「大人でも仮性近視状態の調節緊張が続くことによって、子供の近視が増えているのと同様の状況が20代、30代にも起こりうる時代になってきた」と味木医師は指摘する。
テレビやパソコンなどの映像機器は、その娯楽性やビジネス面から鑑みて日常生活から切り離すのは難しい。そこで、視力低下を招かないようにするための3つの対策を、日ごろから意識してほしいと味木医師は話す。
特にスマートフォンや携帯型ゲーム機は、ついつい画面と目の距離が近くなってしまいがち。だが、「近い距離で画面を長時間見続けない」ということは、視力低下を防ぐために非常に重要なポイント。「目はできる限り、『連続使用』ではなく『断続使用』にしてください。立ちっぱなしや座りっぱなしでは疲れるのと同様、目もずっと同じ作業をしていると疲れます。集中している画面や作業から一度目を離し、距離・位置・質の違うものを見て目の調節力を使ってあげることが大切です」(味木医師)。
テレビやパソコンなどは、できるだけ明るい部屋で視聴するのがよい。暗い部屋の場合は画面のまぶしさを強く感じ、脳が興奮状態に陥る。そうなると、目が痛くなったり気持ちが悪くなったりすることがあるという。逆に休憩時は照明の明かりを落とし、脳をリラックスさせるようにしよう。
寝る前にテレビやスマートフォンなどから発せられているブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が低下して、よく眠れなくなってしまう。正しい睡眠サイクルが阻害されて翌朝の活動にも影響が出てしまうため、就寝1時間前はブルーライトを出すアイテムの使用を控えるようにしよう。寝始めの3時間に熟睡すると、効率よくメラトニンや成長ホルモンがでるのだ。
今回紹介した3つの対策はどれも簡単ではあるが、人によってははっきりと意識していないと実践できないものもあるだろう。ただ、パソコンなど近くのものを見続けないことは、近視化になるリスクを低減させるだけではなく、仕事の効率アップにもつながると味木医師は話す。
「一つの作業を継続的にするのではなく、あらかじめ時間を区切って複数の作業を断続的にやったほうが仕事の能率が上がりますし、目の調節緊張もほぐれます。デスクでストレッチをするなどして、体を動かすことでも目はすっきりします。また、仕事を楽しくやると目も負担を感じにくいので、意識して試してみてください」。
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