どんなに仕事が充実していても、プライベートがうまくいっていても、社会で生活していくなら「ストレス」はつきもの。ストレスを抱え切れず、ついイライラを人にぶつけて関係性が悪化。さらにそれがストレスの原因に…なんて悪循環も起こりがちです。
原因を取り除いたり、考え方をネガポジ転換したりしながら、ストレスとはうまくつきあっていきたいものですよね。
とはいえ、上手なストレス解消の方法がわからない、時間がないので手っ取り早くストレス解消法を知りたい、という人も多いのではないでしょうか?
ストレス解消の100もの科学的メソッドを紹介した『超ストレス解消法』著者であるサイエンスライター・鈴木祐さんにストレスとの向き合い方やすぐできるストレス解消法、グッズについて伺いました。
鈴木 祐(すずき・ゆう)
1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行なっている。『超ストレス解消法』(鉄人社)ほか著書多数。
目次
ストレス解消の近道は、自分のストレスに気づくこと
短い期間にだけ感じる「ショートストレス」
ショートストレスの連鎖「ループストレス」
もっともダメージが大きい「ロングストレス」
心拍変動でストレス度を測るストレストラッカー
激しいストレスを引き起こす「3つの根本要因」の叩き方
考え方や物の見方が偏っている「思考のアンバランス」
「栄養のアンバランス」は打たれ弱いメンタルの原因に
問題から逃げ、現実を否定する「受容のアンバランス」
息切れしないストレス対策。速効性のあるストレスケアは?
副交感神経を優位にする「呼吸法トレーニング」
脳の機能を高める物質が分泌する「エクササイズ」
自然とのふれあいで心が強くなる「バイオフィリア」
ストレスの「真のラスボス」の正体は
年間5,000もの科学論文を読むというだけあって、高いエビデンスがあるストレス解消法に詳しい鈴木さん。開口一番、鈴木さんは「ストレス解消への一番の近道は、自分のストレスにちゃんと気づくこと」と語ります。
たしかに、「ヒーリンググッズだ、ワーケーションだ」などと、ストレス解消の手段選びにばかりに重きを置いてしまいがちですが、まずやるべきことは自分のストレスを知ること。
そしてそのストレスにあった正しい解消法を講じていくことが大切なのだといいます。鈴木さんは著書『超ストレス解消法』のなかで、ストレスを以下の3つに分類しています。
「あいつ、むかつく!」「締切が近い!」といった、日常に体験することの多い急性ストレスです。この類のストレスには、メリットとデメリットがあると鈴木さん。
締切が近いことはストレスになると同時に、モチベーションを高めるための起爆剤となります。そんなメリットを探って生かしながら、適度なレベルにコントロールすることが大切です。
ショートストレスに適切な対策を打たなかったことで、延々と同じストレスに苦しめられてしまうパターンです。自分の部屋が汚いというストレスは、片づけをしない限り解決されることはありません。
早めに薬を飲んでおけば軽い風邪で済んだのに、気づいていながらも不摂生をしてこじらせてしまうというのもループストレスの一例です。
「子どものころに受けたいじめをひきずっている」「借金の心配ばかりしている」といった、ループストレスがさらに深刻化し、慢性化してしまったような状態のこと。
このストレスが恐ろしいのは「慣れ」。ジワジワと心がむしばまれているのに、ショートストレスの対策ばかりをしてしまい、気付いたときには重症化、もしくは手遅れ…。
「生きている限り、私たちはストレスから逃れることはできませんが、心の負担が慢性化する前に処理できるようになれば、必要以上のイライラや不安に苦しめられることはなくなります」と鈴木さん。
ストレスを感じたら、上記3種類のどれに該当するのかを俯瞰して考えてみましょう。著書『超ストレス解消法』には、それぞれのストレスの対処法がたっぷり紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
自分のストレスを知るという点で、まず気になるのが鈴木さんが初代モデルから愛用しているというスマートリング「OURA RING(オーラリング)」。
フィンランドで生まれた指輪型のトラッカーで、「シンプルなデザインがスタイリングの邪魔をしない」という理由から、ウェアラブル通だけでなくファッション関係者にも愛用者が多いというのもうなずけます。
オーラリングの内側には血流を測るセンサーが内蔵されており、その人の活動量、睡眠の質、ストレスレベルなどを計測。自動にスマホへ記録し、ストレス度の変化をグラフで可視化できます。
ストレス度の計測と聞くと心電図や血圧を測るのかと想像しますが、オーラリングがおもしろいのはストレスの測定に「心拍変動」を使っているところ。心拍変動とは心臓が打つ心拍一拍ごとの変動をいい、心臓の自律神経緊張の指標にもなります。
心拍変動は呼吸と深く関わっているため、鈴木さんはオーラリングで瞑想がうまくできているかをチェックすることもあるそうです。
また、「睡眠80点」「ストレス50点」というように基本的な数値しか出ないのですが、これがかえって「今日は睡眠を何点にするぞ、という目標を作ってゲーム感覚でストレスに向き合えるからいい」と鈴木さん。
ストレスをかけずにストレスチェックをしたい人は、試す価値があるはずです。
次々と降りかかるストレスに「その場しのぎ」で対処するのではなく、「根本原因を叩くことが大事」と鈴木さん。以下の3つのアンバランスに、ストレスの根本原因が隠れているかもしれません。
たとえば仕事でミスをしたとします。そこで「自分はなんてドジなんだ」「こんなブラック企業は最低だ」などと、自分や別の対象を責めたくなる気持ちもわかります。
そんな思考のアンバランスを解消するのに有効なのが、「自動思考キャッチトレーニング」。人の認知に働きかけてストレス軽減を試みる「認知行動療法」で用いられる手法で、ここでいう「自動思考」とは自分の意志とは無関係に、ふと頭の中に浮かび上がってくる思考やイメージのこと。
「今日はいい天気だなあ」「あ、いいにおいがする」といったポジティブな思考やイメージなら問題ありませんが、「どうせ自分は嫌われ者だ」「すべては社会が悪い」といった思考が頭をよぎり続けると、ストレスはどんどん積み重なっていくばかり。
そんな「自動思考」にアンバランスが起きていないかを点検するメンテナンストレーニングが必要です。
そこで鈴木さんがすすめるのが「シンプル・ソート・レコード」というもの。何か大きなストレスを感じたら、そのときの「状況」「感情」「思考またはイメージ」を記録していくというシンプルなもの。
記録する期間は最低でも14日間。続けるうちに、思考のアンバランスが把握できるようになるそうです。
「シンプル・ソート・レコード」のシートは鈴木さんのブログにフォーマットが用意されています。ぜひ著書『超ストレス解消法』を片手に、「今日もっとも不快だったことは…」と自分に問いかけてみてください。
該当シートはこちら:シンプル・ソート・レコード
あらかじめ、カード状のものやバインダー穴のついたプリント用紙にプリントしてファイリングして使ってみてはいかがでしょうか。
鈴木さんによれば、ここ数年の研究で「健康的な食事をしている人のほうが格段にストレスに強い」ことが明らかになっているとのこと。
しかし、栄養バランスのとれた食事が心身にいいことはわかっていても、多忙だと食事は後回しにしてしまいがちですし、ストレス解消にとやけ酒・やけ食いをしたことがさらなるストレスにつながることも想像に難くありません。
そこで鈴木さんが教えてくれたのが、3カ月でメンタルを強くする「SMILES」という食事術。
地中海式の食事をベースに、全粒粉のパンやパスタ、野菜やフルーツ、豆類、ナッツ、魚、脂肪の少ない牛肉、羊肉、豚肉、鶏肉、卵、オリーブオイル、乳製品をとる食事法を3カ月続けます。カロリーを気にするとストレスになるため、好きなだけ食べて「食事をちゃんと楽しむ」ということを大切にします。
また、食べるべきものを挙げるとキリがないのに対し、「食べないものを意識することのほうが大切で簡単」と鈴木さん。
酸化した油やファストフード、加工肉、お菓子や清涼飲料水などがその例で、上で紹介したような野菜、フルーツ、魚を増やした食事を心がけることで、「不摂生な暮らしをしていた人ほどメンタルが大きく改善される」のだとか。
効用が語られることの多いカフェインを控えてみるのも一策。脳の疲労センサーにはりついて、一時的に疲れをブロックしてくれるカフェインも、毎日のように大量に摂取していると、脳が疲労センサーを増やしてしまうのだとか。
まずは7~12日間はコーヒーや緑茶、紅茶といったカフェインを多く含む飲み物の摂取をやめて、リセットしてみるのはどうでしょう。「仕事中はコーヒーじゃないと…」という人には、カフェイン抜きでコーヒーの風味を楽しめるデカフェに替えるのもおすすめです。
そして、第二の脳ともいわれる「腸」に着目するのも有効。幸せホルモンといわれるセロトニンなどの脳内物質の多くが腸で作られているのはご存じのとおり。
水溶性の食物繊維やオリゴ糖に代表される「プロバイオティクス」などのサプリなどを活用し、腸内環境のコンディションを整えましょう。
仕事でミスをしたときに「ミスをしたのは事実だから、同じことをしないように気をつけよう」と考えるか、「あのとき、もっと早く仕事に手をつけていれば、ミスなんて起きなかっただろうに」と考えるか…。
後者は鈴木さんのいう「受容のアンバランス」が起きている人の思考例です。いくら悩んでもコントロールできない過去のことばかり考え続けていては、ストレスは溜まって当然です。
さらにいけないのは、自分の感情に対して「受容のアンバランス」が起こること。ネガティブな感情から目をそむけたり、イライラしたりクヨクヨしたりする自分を責めたりするせいで、逆にメンタルに悪影響が出てしまうことが多いのだそうです。
心理学ではネガティブな感情を避けることを「体験の回避」とし、メンタルを病む最大の原因のひとつだと考えられているそうです。ストレスに強くなりたいなら、「ネガティブな体験を避けるのではなく、『受容』の精神を育てながら、人生のリアルを積極的に受け入れていくしかない」と鈴木さんは著書で語っています。
受容の精神を育て、自分のものにするためのセラピーは数多くありますが、手始めに試してみたいのが「アクセプタンス・ワードセラピー」。
受容の精神を体現する名言を読むことで「受容」の感覚を育むやり方で、鈴木さんは著書に作家のヘルマン・ヘッセ、詩人のライナー・マリア・リルケ、哲学者の老子の言葉を挙げています。
また、鴨長明の『方丈記』、吉田兼好の『徒然草』にも受容の大切さが説かれているそう。同じ古典でも日本のものなら手が出しやすそうですね。
ストレスケアやメンタルケアは、自分と深く向き合いながら時間をかけて行うものが多いですが、それだけだと息切れしてしまうかもしれません。速効性のあるストレス解消法も上手に取り入れていきたいものです。
速効性のあるストレス解消法のなかでも、鈴木さんが科学的に効果の大きさが証明されている「三種の神器」とするのが、以下の3つの方法です。
「簡単に実践できる数少ない緊張ハックです」と鈴木さんが太鼓判を押すのが「深呼吸」。人間の体は呼吸をしているときは副交感神経が優位になるので、緊張しにくくなるのだそう。始めは1分でいいから続けてみて、ゆくゆくは5分ぐらいできるようになってほしいと鈴木さんは話します。
道具やウェアも必要なく、どこでも実践できる呼吸法。鈴木さんの著書にはいくつもの方法が紹介されているので、ぜひ参考にしてください。
また、呼吸の大切さはわかっていても、ストレス下では呼吸を意識することもままならないことがあります。そんなときに鈴木さんがすすめるのが「SPIRE」(スピア)というガジェット。
本体のクリップを衣服に挟んでおくだけで、腹部のふくらみをモニタリングしてくれるというもので、呼吸が浅くなるとバイブレーションでお知らせ。
呼吸の変化はスマホに送られ、「会議のときは緊張していたな」「読書をするとリラックスできるんだな」と、毎日のストレスモニターの役割も果たします。
いいアイデアが浮かばないから走ってくる、ウォーキングをすると頭が整理される…なんてことをよく耳にします。たしかに体を動かすと気持ちのもやもやが晴れるのを感じます。
「長時間のランニングや激しい筋トレではなくとも、ほんのちょっとキビキビと歩くだけでストレスは一気に改善へと向かう」と鈴木さん。著書では「エクササイズのストレス解消効果は、もはや常識」という頼もしい言葉が、さまざまな研究結果とともに紹介されていいます。
まだまだ続きそうなコロナ禍、そして暑さ対策のためにも、室内でちょっと体を動かすことを意識すれば、心身の健康に役立つのではないでしょうか。
速効性のあるストレスケアの3つ目が「バイオフィリア」。「人間の脳には、大自然とのふれあいを求める欲望が備わっている」という考え方のことだそうです。自然とふれあうと副交感神経が活性化して、一気にストレスが減り、その効果はこれまでに紹介した呼吸や運動の上を行くとか。
著書『超ストレス解消法』では、理想的な太陽の浴び方や森林浴の良さを紹介するとともに、都会で暮らす人ほどメンタルを病みやすくなる理由をさまざまな研究結果を挙げて紹介しています。
とはいえ、ビジネスパーソンにとって毎日自然を求めることは難しいですし、都会を離れて田舎暮らしをしようというのも非現実的。
そこで活用したいのが「観葉植物」や「アロマテラピー」。風の音や鳥のさえずりといった「自然音」なら、スマホアプリなどから流れてくる音でもOK。これから自宅にいながら簡単に「バイオフィリア」の効果を享受することができますね。
また、ガーデニングはバイオフィリアであると同時に「エクササイズ」の一環であるグリーン・エクササイズとしてストレス解消の効果が得られるそうです。観葉植物や花、ハーブを育てたり、アロマオイルの香りに癒されたり、自然の音を楽しんだり…。
ストレス解消法と思って始めたことが、ストレス対策にとどまらず、暮らしの楽しみとなったり、趣味として生き方の幅が広がったりするのは理想的ですね。
ストレス解消を講じていくうちに、「真のラスボスの存在に気づくはず」と鈴木さん。
真のラスボスとは「自分」のこと。鈴木さんは著書で「ネガティブな思考にせよ感情にせよ、どちらの問題も、実はあなたの『脳の癖』が生み出した一時的なリアクションに過ぎません」と述べています。
さまざまな環境に置かれるなかで、ストレスを受けることは仕方がないこと。しかし、たとえば同僚に無視されたからといって、カッとした感情を持ち続けたり、逆に感情を押し殺したりしてしまっては、さらなるストレスにつながりかねません。
そうならないためのヒントが驚くほどたくさん盛り込まれているのが、この『超ストレス解消法』です。
勇気づけられるのは、著書を書くほどストレス解消法に詳しい鈴木さんが、ストレスに苦しんだ経験を持つということ。
「鬱鬱とした状態を正したかった」ことに端を発した鈴木さんの経験とエビデンスに基づいた100ストレス解消法から、ぜひ自分にあうストレス解消のメソッドやストレス解消グッズを見つけてみてください。
※「かいサポ」チームでは、あなたのお買いものをスマートにサポートするコンテンツを配信。家電にインテリア、コスメ、スキンケア、アウトドア用品にガジェット、フードまで。その道のプロが「ほんとうにいいもの」への最短距離をご紹介します。
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