テレビやPCモニターなど、ディスプレイが備える色域(色再現範囲)性能を表現する新たな手法「Gamut Rings(ガマットリングス)」をNHK放送技術研究所が考案。国際電気標準会議(IEC)で2021年1月に、国際照明委員会(CIE)で2021年11月に国際標準として採用されたとNHKが発表した。合わせて、ディスプレイの色域を自動で測定し、新手法で表示する装置も開発した。
試作したディスプレイ色域自動測定装置従来、色域は、原色(赤・青・緑)の色度点で定義される、色度図上の三角形の領域で簡易的に表現していた。
従来の色度図上の色域表現。三角形の面積が大きいほど、色再現範囲が広いとされる従来の色度図は、紙面上など2次元で表現するのに便利だが、本来、ディスプレイの色域を正しく評価するには、明度も含めた3次元の“色域立体”で表現する必要があった。しかし色域立体は、その3次元形状を自由な角度から見る機能がある表示装置(PCやタブレット等)でないと、正しく評価することができなかった。このため、3次元の色域立体を適切に評価できる、新たな2次元表現手法の開発が課題となっていたという
色域立体の例。体積が大きいほど、色再現範囲が広い今回NHK技研が考案した「Gamut Rings」は、色域立体を2次元投影することで、ディスプレイの色域を正しく表現。
具体的には、色域立体を一定の明度間隔で輪切りにして、明度の低い方から平面に引き延ばし、より高い明度の色域をその周辺にリング状に配置。リングの面積は3次元の色域の体積に比例。中心からの角度は赤、青、緑などの色相を表している。
ディスプレイAとBの色域を「Gamut Rings」で計測した例。従来の色度図では色再現範囲が同じに見えるが、Gamut Ringsでは差が大きいことが分かる。(ディスプレイAの方が、色再現範囲が広い。ディスプレイBは特に明度が高い場合に高い彩度が表現できない)この手法により、ディスプレイの色再現範囲をより正確に、分かりやすく可視化することを実現。「色域を正しく評価できるため、ディスプレイの設計や性能評価をはじめ、放送用から家庭用までさまざまなディスプレイやテレビの性能比較や選定において役立つことが期待される」という。またGamut Ringsは、ディスプレイだけでなく、プリンターなどの色再現範囲の正しい評価にも有効だという。
なおGamut Ringsの“Rings”は、見た目が木の切り株の年輪(annual growth rings)に似ていることに由来する。
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