近年、さまざまなジャンルで注目を集めているピクセルアート。ドット絵が持つ独特の雰囲気はとても魅力的だが、その作品を生み出すためにはどんなPCが必要なのか。ピクセルアート制作チーム「ULTIMATE PIXEL CREW」のメンバーとしても活動し、幅広い分野でピクセルアートを制作するAPO+氏。最近では、ドット絵による背景制作の秘訣などを盛り込んだ書籍『ULTIMATE PIXEL CREW REPORT ピクセルアートではじめる背景の描き方』をチームで執筆するなど、ピクセルアートのすそ野を広げるような取り組みも手掛けている。そこで今回は、APO+氏にマウスコンピューターのクリエイター向けデスクトップPCDAIV Z7のパフォーマンスを検証してもらうとともに、性能面以外で気に入った点についても語ってもらった。
●DAIVシリーズの詳細はこちらTEXT_近藤寿成(スプール)
APO+氏の作品
一般的なCGと比べて解像度の低いピクセルアートは、何も知らなければ「それほど手間をかけずに制作できるのでは?」と思いがちだ。実際、APO+氏の作品の基本解像度は「480×270ピクセル」とフルHDの1/4しかないため、「完成させやすい」という意味では、初心者にとっても取り組みやすいだろう。ただし、APO+氏の作品は動きのあるアニメーション作品も多いため、制作のワークフローを聞くと想像以上に手間と時間をかけていることが見えてくる。
APO+氏の場合、まずは作品のベースとなるイメージをパソコン上でスケッチする。そして、次に使用するのがBlender。APO+氏の作品は、多くの構造物などがひしめき合う背景が多いため、その整合性を取るためにBlenderを使うそうだ。さらに、Blenderをライティングの試行錯誤にも使用。ハイライトの入れ方を確認したり太陽光とは別の光源を追加したりして大まかな雰囲気や影の方向などをチェックし、「ライティングのバランスやイメージを決めていく」(APO+氏)。
Blenderの作業が終了したらそのデータを書き出し、次はPhotoshopで作業する。ただし、APO+氏は書き出したデータをそのまま使うのではなく、それをベースに「改めて1からすべて手で描き直す」ため、Photoshopでの作業は「20時間から、長いときで30~40時間」(APO+氏)もかかるそうだ。
Photoshopで静止画が完成したら、次はドット絵専用のアニメーションソフトAsepriteを使用してアニメーションを作成。アニメーションの完成後に修正や描き足しなどが必要な場合は再度Photoshopに戻して手を加え、そこから最終的にAfter Effectsへと移す。
After Effectsでは、Trapcode Particularを使ってさまざまなエフェクトを加えるほか、カラーホイールを使って色を調整。そのほか、手の動きや揺らめき、機械的な動きなどは「After Effectsのキーフレームやエフェクトを使った方が早く手軽に表現できる」(APO+氏)ため、補助的なアニメーションにも使用するそうだ。そしてAfter Effectsでの作業が終了したら連番のPNGファイルとして書き出し、最終的にPhotoshopでGIFファイルとして出力することで、すべての作業が完了する。
このように、さまざまなソフトを横断する作業することを踏まえ、今回はAPO+氏が複数のソフトで使い勝手をチェック。マウスコンピューターのクリエイター向けデスクトップPCが持つ性能と魅力を見極めてもらった。
今回はAPO+氏にマウスコンピューターのDAIV Z7を使用してもらい、APO+氏が普段利用しているPCと比較しながら、DAIV Z7の性能や使い勝手などを検証してもらった。
DAIV Z7は、ハイクラスのデスクトップ向けCPUインテル Core i7-11700 プロセッサーを搭載。2021年3月に登場した最新の第11世代で、8コア16スレッド、基本クロックは2.5GHz、ターボ・ブースト利用時の最大クロックは4.9GHzという優れた性能を有する。さらに、第11世代は新たなアーキテクチャーを採用しており、IPC(Instructions Per Clock:1クロック当たりの命令実行数)の向上などによって、前世代よりもパフォーマンスが大きく向上してる点が特徴だ。また、GPUにはミドルクラスのGeForce RTX 3060を搭載し、メモリは32GB、ストレージは512GB SSD(NVMe接続)と2TB HDDのデュアル構成というバランスの取れた内容で、価格は24万1780円(税込)となる。
(※実売価格は9月21日現在のものです)
DAIV Z7
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一方、APO+氏の現行機はCPUにインテル Corei9-10900KF プロセッサー、GPUにNVIDIA GeForce RTX 2060 SUPER(8GB)を搭載。DAIV Z7と比較するとどちらも1世代前のパーツとなるが、スペック的には同レベルあるいはそれ以上の高い性能を持つ。また、メモリは32GB、ストレージはSSD+HDDのデュアル構成となる。そのほか、4K解像度の24型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 24」を使用している点は、クリエイターらしいポイントだ。
APO+氏の現行機
APO+氏の作品
検証では、APO+氏が制作で使用する「Blender」「After Effects」「Photoshop」を実際に使ってもらい、その使用感や処理スピードなどを比較してもらった。
まずBlenderでは、レンダラー「Cycles」を使ってGPUレンダリングをしたところ、APO+氏は現行機よりもDAIV Z7の方が「スムーズに処理できた」と感じたそうだ。DAIV Z7が搭載するGeForce RTX 3060と現行機のGeForce RTX 2060 SUPERはほぼ同クラスのGPUとなるため「劇的な違いはなかった」ものの世代の違いが性能差として現れて、「感覚的に10~20%ほど速くなった」と語った。
CPUの性能が影響しやすいAfter Effectsでは、DAIV Z7も現行機とそん色ない快適な処理性能を見せ、それほど「大きな差は感じなかった」(APO+氏)とのこと。DAIV Z7のCore i7-11700は現行機のCorei9-10900KFと比較してコア数もクロック数も劣っているが、世代の違い(=アーキテクチャの違い)がCPUのスペック差を埋めたと考えられる。
Photoshopでは、ピクセルアートがもともと「解像度が低い」という特性から「作業自体が重くなることはほぼない」(APO+氏)ため、こちらでも特別な差は見られなかった。ただ、「レイヤーがかなり増えると、スペックの差でパフォーマンスに違いが出る可能性はある」とAPO+氏は付け加えた。
性能面以外でAPO+氏がDAIV Z7の魅力として気に入ったのは「使い勝手の良さ」だ。例えば、APO+氏は「部屋の模様替えをして気分転換する」ことがよくあるため、上面に取っ手、下面にキャスターを備えるなどの持ち運びを意識した筐体デザインに大注目。サイバー感のある自分好みのデザインと相まって、とても好評価だった。
またちょっとした部分だが、インターフェース周りとしてUSB3.0(Type-A)が前面に"2つ"あることにも触れ、「クリエイターはデータのやり取りやカメラなどからのデータの取り込みが多いので、これは便利」と補足。APO+氏の現行機は前面に"1つ"しかないこともあり、小さくない利便性を感じたようだ。
そのほか、APO+氏自身は自分でデスクトップPCを組み上げる自作派だが、「電源を入れるだけで起動してすぐに利用できる」というメーカー製PCならではの手軽さも見逃さない。DAIV Z7は、自作で組み上げたAPO+氏の現行機と比較しても総合的なコストパフォーマンスは劣っていないうえに、「1年間センドバック修理保証」や「24時間×365日電話サポート」が付くことを考慮すれば「正直、魅力的だ」(APO+氏)。さらに、Wi-FiとBluetoothを標準で搭載することなども踏まえると、PCが苦手なクリエイターや初心者でも安心して使えるという点は「大きなメリットになる」とAPO+氏は評価した。
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