●YouTube視聴とキャッシュに対応したメディアプレーヤー
アイ・オー・データ機器「LinkTV」は、ネットワーク対応のメディアプレーヤーだ。LANの共有フォルダのファイルや、USBストレージのファイル、さらにUPnP準拠サーバーのファイルの再生ができるほか、YouTubeの動画の再生にも対応する。YouTubeの動画はUSBストレージにキャッシュできるので、混雑する夕刻から深夜にかけての時間帯でもスムーズに再生可能だ。
パッケージ内容は、LinkTV本体、ACアダプタ、リモコン、リモコン用電池(単4×2)、HDMIケーブル、LANケーブル、冊子類 | 本体前面。USB 2.0ポート×2、電源ボタン | 本体を斜め上から見たところ |
側面。排気口がある | 背面。左から光デジタル音声、RCA(映像、左音声、右音声)、100Mbps対応有線LAN、HDMI、ACアダプタの順に端子が並ぶ | 天面。dts対応を示すロゴがプリントされている(dts2.0+Digital Out) |
底面。ゴム足、排気口、MACアドレス等をプリントしたシール等がある | リモコン。文字入力時以外は「*」ボタンが音量ダウン、「#」ボタンが音量アップ。文字入力時の入力モード切り替えは「青」ボタン(日→半角英→半角数) | リモコン裏面。単4電池が2本入る |
YouTubeの再生は本体組み込みのプレーヤーに加え、YouTubeが提供する大画面TV向け表示「YouTube XL」にも対応している。また、ベータ版ではあるがWebブラウザを搭載、現在のところFLASHの多いページは苦手だが、ネットサーフィンも可能だ。
対応しているファイル形式は、映像がMPEG-1/2/4、音声がMP3とAAC、画像がJPEG、BMP、PNG、GIF、TIFF。100Mbps対応の有線LANポートを搭載し、映像と音声の出力はHDMI、光デジタル音声、RCA(映像、L、R)の3種類。大きさは153×101×37mm(幅×奥行き×高さ)、重量は340g。電源は12VのACアダプタで、消費電力は4.0Wとなっている。
USBポートはUSB 2.0対応で本体前面に2ポート搭載。USBメモリやUSBハードディスク等のUSBストレージが接続できる。操作は付属のリモコンで行なうが、USBポートに接続した日本語106キーボードやポインティングデバイスも利用可能だ。
●TV感覚で使えるYouTubeプレーヤーメディアプレーヤーと言う名称からは想像しにくいかもしれないが、LinkTVはYouTubeプレーヤーと呼ばれてもおかしくないくらいYouTubeの再生機能が重視されている。何しろ電源を投入するとまずYouTubeの動画の再生から始まるくらいだ。メニュー構成を見るとその他の機能はYouTubeプレーヤーを使わない時に呼び出される機能、くらいの位置付けだ。
チャンネル設定。キーワードと表示順序を登録する | 「キャッシュ」設定。画質の変更とUSBストレージの初期化(NTFS)ができる。キャッシュはリモコンの「キャッシュ」ボタンで予約できる |
番組表(同名ボタンで開く)。登録したチャンネル別に再生候補の動画が並ぶ。未キャッシュのものもサムネイルは表示される | 「リスト」ボタンで開く「キャッシュ」一覧。キャッシュ済み動画がサムネイル付きで表示される。さらに「リスト」ボタンを押すと「お気に入り」一覧が開く。削除は「メニュー」ボタンからできる | 「YouTube XL」の表示例。ログインしてお気に入りを表示しているところ |
LinkTVのYouTubeプレーヤーは、あらかじめ「チャンネル」に設定された通り動画をリストアップして連続リピート再生するものだ。TVをつけっぱなしにして流し見する感覚で、YouTubeの動画を楽しむことができる。TVは深夜放送していない時間帯もあるが、LinkTVなら時間帯を気にせず使える。
先に「チャンネル」と書いたが、LinkTVのチャンネルはYouTubeで言うチャンネルとは違うものだ。YouTubeのチャンネルは、自分の動画や動画のブックマークを保存しておく場所であり、Twitterのようにフォローしたりされたりするアカウントそのものでもある。登録しているチャンネルや視聴する動画の傾向に合わせておすすめの動画を提示してくれるので、使っていくうちに利用者にとって便利なものに成長していく。これに対してLinkTVのチャンネルはキーワード検索のプリセットであり、アカウントとも結び付けられていないので成長要素は無いが、常にキーワードに合致したメジャーな動画を探してきてくれる。YouTubeの様な動画共有サイトならではの要素が省略されているが、TV的な簡単さを実現している。
登録できるチャンネルは0~9の全10チャンネル。デフォルトで設定されているチャンネルは「急上昇」「再生回数ランキング」「音楽」「ドラマ」「スポーツ」「映画」「アニメ」「ニュース」「バラエティ」「ゲーム」だ。リモコンの数字ボタンやチャンネル変更ボタン、左右カーソルボタンで切り替えることができる。検索コマンドとして「OR」や「-」(NOT)が利用可能なことから検索機能自体はYouTubeのものを使っているようだ。ただし、検索結果自体はYouTubeのものとは必ずしも一致しないことから、何らかのフィルタを使用しているものと思われる。
例えば「awesome window manager」で検索するとPCではウィンドウシステムの紹介動画がリストアップされるが、LinkTV側では検索結果が見つからないのか、まったく関係の無い動画がリストアップされる。かと言って日本語コンテンツのみ表示するようにしているわけでは無いようで、例えばドラマの検索結果は日本ではあまり馴染みの無い漢字表記の動画が並ぶ。というわけで目当ての動画をうまく探すには少々研究が必要なようだ。ちょっと気になったのは、例えばドラマやアニメならオフィシャルのものが検索結果に出てきておかしくないはずなのに、それが出てこないこと。ひょっとしたら再生時間が短めの動画をリストアップするよう設定されているのかもしれない。
キャッシュについてだが、高解像度の動画のキャッシュには時間がかかる。チャンネル設定でキャッシュ保存するように設定した直後などは動作が重くなり、再生が途切れるようになるので、キャッシュ設定変更直後は再生を止めてキャッシュが完了するまで放置するなどの工夫が必要だ。キャッシュに保存にはUSBストレージを使うが、その際にフォーマットしなおす必要がある。フォーマット後はキャッシュ専用のストレージとして使われる。フォーマット形式はWindowsから見てもLinux上で見てもNTFSと表示され、ファイルの書き込みも可能だが、メーカーはその点について保証していない。
それから、YouTube XLについてだが、こちらはPCからもアクセスできる大画面TV向けのGUIで、YouTube動画が再生できる点以外はLinkTV組み込みのYouTubeプレーヤーとは別物だ。いつも使っているYouTubeアカウントでログイン可能でお気に入りや再生リストもそのまま使えるほか、検索結果もPC版とほぼ同じものになる。再生画面の最大化はリモコンの表示切替ボタン(拡大/縮小)で行なえる。視聴を楽しむならLinkTV組み込みのものを使うのがおすすめだが、PCでお気に入りに登録した動画を確認したい時などに重宝する。
【お詫びと訂正】初出時、YouTube XLは画面の最大化ができないと記載しておりましたが、リモコンの表示切替ボタンで最大化が可能です。お詫びして訂正いたします。
●USB、共有フォルダ、UPnPに対応したメディアプレーヤーメディアプレーヤー機能は、リモコンの「メニュー」ボタンから呼び出すことができる。接続したUSBストレージやLANの共有フォルダを開くことが可能で、UPnPサーバー(DLNAサーバーに近い機能を持つサーバー)にも対応している。対応しているUPnPサーバーはWindows Media Player 11(Windows Vista)や同12(Windows 7)など。LinuxのMediatombも利用できたので、Macでも同様にMediatombが利用可能かもしれない。DTCP-IPについては残念ながら対応していない。
「メニュー」で「メディアプレーヤー」の項目を開いたところ。まず開くファイルの種類を選択する | 「メディアプレーヤー」で「フォト」を選択したところ。「USB」「NET(Windowsのファイル共有)」「UPNP」の3つの項目が並ぶ | 前の画面で「NET」を選択したところ。認識されているグループ名が表示 |
音楽ファイルの再生画面例。ここで「メニュー」ボタンを押すとシャッフル等の再生モードが使える | 静止画ファイルの再生画面例。「メニュー」ボタンを押すとスライド機能や画質の設定ができる | 動画ファイルの再生例。「メニュー」ボタンを押すと字幕表示や再生モードの切り替えができる |
対応している動画のファイル形式についてだが、Xvid(DivXのオープンソース版)も利用可能となっているが、枝分かれしてから随分経っていることもあるせいかDivX形式で保存したファイルの再生はできなかった。また、対応している画像のファイル形式についてだが、GIFファイルでもアニメGIFには対応していないほか、PNGファイルでも透過PNGには対応していない。音声ファイルについてはDRMに対応していない。
以上のことからLinkTVのメディアプレーヤーは、地デジ以前の録画動画か、DRMのかかっていない音声ファイル、デジカメ写真等を大画面を使って楽しむのに向いた機能だと言える。
●その他ヘルプや他の設定についてヘルプについてだが、公式サイトで公開されている「画面で見るライブラリ」そのままをWebブラウザで表示しているようだ。変更があっても改訂が即反映されてるということで安心感がある。ファームウェアアップデートについてだが、ボタン操作で簡単にできるのは好感が持てる。動画の出力解像度や画質についてだが、デフォルトでは最高画質のものに設定されているが、速度面のメリットを優先して画質を落とすのもありかもしれない。
「画面で見るマニュアル」はアイ・オー・データの公式サイトで公開されているものと同じ | 「設定」メニューを開いたところ。「ファームウェアアップデート」「キャッシュ」「映像」「ネットワーク」「システム」の5項目 | ファームウェアのオンラインアップデートに対応。現在のバージョンは2.10(出荷時2.0) |
「映像」設定で解像度やアスペクトの変更が可能。HDMI出力の場合「自動」がデフォルト | 「ネットワーク」設定。IPアドレスの手動設定等ができる | 「システム」設定。ここで本体を「工場出荷時」状態に戻すことができる。お気に入りも消えてしまう点に注意 |
なお、設定画面で「工場出荷時設定に戻す」機能を使うときに忘れないでおきたいのが「お気に入り」の扱い。YouTubeプレーヤーで登録したお気に入りは接続したUSBストレージでは無く本体内のメモリに保存される。だから、工場出荷時設定に戻してしまうと「お気に入り」も消えてしまう。エクスポートする機能も無いので、無くなって困る場合はお気に入り画面を撮影保存しておくなど、対策が必要だ。YouTube XLでアカウントにログインして同様に「お気に入り」に登録しておくのもいいかもしれない。
●まとめと感想YouTube再生機能を前面に打ち出した最初の機種ということもあるせいか、メニューやレスポンス、マニュアルなど、各方面でまだこなれていないという印象を受けた。本文中でも触れたが現在でもYouTubeをTV的に見るツールとしてはデフォルト設定でも十分実用的だ。ただ、YouTubeのアカウントにチャンネルを100件以上登録して使っている筆者からすると検索機能まわりは物足りない。YouTubeであれば、それだけ使っていれば高い確度で当たりのおすすめ動画を提示してくれるわけで、動画以外のYouTubeのパワーも取り込むべきだと思うのだがどうだろうか。それから、せっかくLANやインターネットに接続できるわけだから、キャッシュはPCと共有できないものだろうか。
などなど、個人的要求ばかりになってしまったが、速くなったと言われる現在でも動画共有サイトを使う上では速度の壁はあるわけで、キャッシュを使ってそれを解消するのは自然な流れであり、今後も長期に渡って有用なことだと思うので、是非この隙間を埋めるべく今後も進化を続けて欲しいと思う。
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