「WN-AG450DGR」は2011年12月にアイ・オー・データ機器が発売した2.4GHz/5GHz帯両対応の無線LANルーターだ。最大450Mbpsでの無線LAN接続に対応し(5GHz帯)、USB機器のLAN内での共用が可能なほか、VPNサーバーとしても使える多機能モデルだ。
●概要WN-AG450DGRは、2.4GHz帯と5GHz帯の無線LAN機能に加え、1Gbps対応の有線LANポート4つ、WANポートを1つ搭載している。2.4GHz帯では最大300Mbps、5GHz帯では最大450Mbpsで接続できる(どちらも倍速モード時)。無線LANのスループットは実測値で213Mbps出たとしている。
本体以外の付属品一覧。ACアダプタ、LANケーブル(1m)、マニュアル類、注意書きシール | 本体天面(縦置き時側面)。電源、お知らせ、ワイヤレス、WPSのランプが並ぶ。WPSのランプ右側にある突起はWPSボタン | 底面(縦置き時側面)。横置き時用のゴム足と排気口がある。本体中程のシールにはMACアドレス、シリアルナンバー、ライセンスキー、暗号キー、PIN、SSID、QRコードが記載 |
背面。左からACコネクタ、WAN/LAN兼用ポート×1、LANポート×1、USB 2.0ポート×2、モード切替スイッチ、リセットボタン | 側面(縦置き時底面)。排気口がある。反対側の面(縦置き時天面)は左右対称の形状 | 縦置き時用のスタンド固定具の爪で本体に引っ掛ける仕組み。ゴム足も付いている |
管理画面のトップページ。ステータス画面でもある | ECOモード。日をまたぐ設定はできない。ワットモニター(サンワサプライ)で調べたところ、出荷時設定で6.0Wだった。ランプを消し、有線LANと2.4GHz帯無線LANを低速モードにして、5GHz帯無線LANをオフにした場合で4.1Wだった | URLフィルターとして外部のサービス「ファミリースマイル」(1年目は無料、それ以降は有料)が利用できる |
特徴的なのが、USB 2.0ポートを2つ搭載していること。例えば、HDDを繋いでNASとして使いつつ、プリンタを繋いでプリントサーバーとして使うことができる。USB機器はHDDやプリンタ以外にも幅広く対応していて、LAN内のPCで遠隔共用できる。
そのほか便利な機能としてPPTPサーバー(VPNサーバー)と無料のダイナミックDNSサービス「iobb.net」、ランプの消灯や接続速度を落として節電を行う「ECOモード」、AndroidやiOS端末の接続が簡単にできる無料の専用アプリ「QRコネクト」が利用できる。また、有料になるが、悪質サイトへのアクセスをブロックする「ファミリースマイル」と呼ばれるサービスに対応しており、管理画面で設定可能だ。
●ベンチマーク今回はLANの速度とインターネットの接続速度の2種類行なった。以下順に解説する。
まず、LANの速度は共有フォルダをネットワークドライブとしてマウントして「Crystal Disk Mark 3.0.1」で測定した。測定元のPCはWindows 7 Home Premium 32bit(Celeron M 723)、測定先のPCはWindows 7 Professional 64bit(Pentium G620T)とUbuntu 11.10 32bit(Atom D2700)。さらに、Ubuntuマシンにインストールしたvsftpdを使ってFTPの速度を測定した。
測定先のPCはいずれも1Gbpsの有線LANでWN-AG450DGRに直接接続した。測定元のPCは1Gbpsの有線LANに加え、ロジテックの無線LAN子機「LAN-W450AN/U2」を使ってWN-AG450DGRに直接接続した。テスト環境は近隣にIEEE 802.11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの1室。通知領域のネットワークアイコンからリストを開いて確認したところ、2.4GHz帯ユーザーは5件以上、5GHz帯ユーザーは0件だった。無線LANのセキュリティ機能はWPA2-PSKを使用した。
測定は「ルーターモード」(PPPoE接続使用時と非使用時)と「AP(アクセスポイント)モード」の3つのモードで行なった。一般的にはPPPoE接続を使用しない(負荷の軽い)場合のFTPの速度が最速になることが多いが、必ずしもそうとは言い切れない結果になった。無線LANでは100Mbpsの有線LAN並かそれ以上の速度が出ているケースが多く、読み込み最速は約179.0Mbps、書き込み最速は約184Mbpsだった(どちらもルーターモードで5GHz帯無線LAN使用時)。有線では読み込み約493Mbps、書き込み約635Mbpsが最速だった。
ルーターモード(PPPoE接続時)での5GHz帯11n倍速モードのベンチマーク結果(Windowsの共有ドライブ) |
ルーターモードでの5GHz帯11n倍速モードのベンチマーク結果(Windowsの共有ドライブ) |
アクセスポイントモードでの5GHz帯11n倍速モードのベンチマーク結果(Windowsの共有ドライブ) |
次にインターネットの接続速度について。WN-AG450DGRにはインターネットの接続速度を向上させるNATアクセラレータと呼ばれる機能を搭載している。その効果を調べるために、NATアクセラレータをオンにした場合とオフにした場合の速度を測定した。測定には「価格.com」の「スピードテスト」を使用した。回線はフレッツ光ネクスト。
NATアクセラレータの設定は詳細設定のNATタブにある。IPv6パススルーとの併用ができない点に注意 |
5回ずつ行なった試行の結果を見る限り、NATアクセラレータ使用時は上り速度が1割以上向上しているように見える。下り速度について変化があまり無いが、これは速度限界に達していて数値上の差が見えなくなっているからかもしれない。ただし、インターネット接続では速度の振れ幅が大きいので、テスト結果に見られるような速度向上の効果が常に得られるとしても、実際に受けられるメリットは誤差の範囲になってしまうかもしれない。
●USBWN-AG450DGRがはUSB 2.0ポートを2つ搭載している。このUSB 2.0ポートはLANにつながったPCからUSB機器を遠隔共用するためのもので、HDDを繋げばNASとして、プリンタを繋げばプリントサーバーとして使える。ほかにも、スキャナやブルーレイドライブ、DVDドライブ、マウス、ディスプレイアダプタ、地デジチューナ、USBメモリなど非常に多くの種類のUSB機器が使える。
NASモードでUSBストレージを接続している状態。パーテーションごとにリスト表示される | エクスプローラーでNASを表示しているところ。括弧内の頭文字が同じフォルダは物理的に同じドライブで別パーテーション |
net.USBモードでUSBメモリとポインティングデバイスを接続している状態 | Windows版のnet.USBクライアント。接続したUSB機器を使うにはドライバのインストールが必要 |
制限もあり、HDDの場合はそれ以外のUSB機器を繋げられなくなること。WN-AG450DGRはHDDを繋ぐとNASとして使えるのだが、NAS機能とそれ以外のUSB機器を遠隔共用するための「net.USB」と呼ばれる機能が同時利用できない。ただし、プリンタだけは例外で、NAS機能使う場合でも、net.USBを使う場合でも、同時にプリンタをつないでプリントサーバーとしても使うことができる。
net.USBを使うにはサポートサイトで提供されている「net.USB クライアント」(Windows XP/Vista/7、Mac OS対応)のインストールが必要だ。net.USBを使ってつないだUSB機器を使うにはPC本体のUSBポートにつないだ時と同様にドライバのインストールが必要だ。使用中のUSB機器は専有状態になるため、他のPCから使うことはできない。
NAS機能を使った場合の速度は以下の表の通り。USB 2.0接続対応のHDDを使った場合で読み込みは87Mbps前後、書き込みは107Mbps前後が最速だった(1Gbps有線LAN接続時)。無線LAN接続では5GHz帯の倍速モードを使った場合が最速で読み込みは約68Mbps、書き込みは約69Mbpsだった。
NASモードでのベンチマーク結果(1Gbps有線接続、1TBのUSB 2.0対応HDDを使用) |
WN-AG450DGRはPPTPサーバーを搭載している。PPTPサーバーはVPNサーバーで、インターネット経由で自宅やオフィスのLANに接続できる。出先で忘れたファイルを取り出したり、ファイルの受け渡し手段に使える。Windows PCではPPTPクライアントが標準的にインストールされているほか、Android端末やiOS端末からも利用可能だ。同時接続数は3台までとなっている。
VPNの設定画面。「リモートIP範囲」は接続してきたコンピューターに割り当てられるIPアドレスの範囲 | ダイナミックDNSサービス「iobb.net」の設定画面。あらかじめiobb.netのWebサイトで登録したシリアルナンバー、パスワード、ホスト名を設定する |
ダイナミックDNSサービス「iobb.net」が無料で利用できるので、固定IPアドレスサービスを使っていない場合でも追加投資無しで、いつでも同じアドレス(ドメイン名)でPPTPサーバーを利用できる。もちろん、iobb.netはPPTPサーバー専用のサービスではないので、ポートフォワーディング機能を使えば、WebサイトやFTPサーバーも同じアドレスで運用可能だ。
●QRコネクトカメラを搭載したiOSやAndroidを搭載したスマートフォンやタブレット端末であれば、本体裏面シールにあるQRコードを使ってSSIDと暗号化キーを入力できるアプリ「QRコネクト」が便利だ。SSIDだけでなく暗号化キーも手入力する必要が無い。
iOS版QRコネクトの起動直後の画面。カメラを使用してQRコードを読み取る | QRコードの撮影画面。少し離れたところからゆっくり近づけていくと認識させやすいようだ |
QRコードの読み取りに成功するとSSIDを表示する。出荷時設定のままであれば、SSID1(本体裏面シールにも表記)が表示される | 問題が無ければインストールボタンを押して設定(SSIDと暗号化キー)を登録する。SSIDも暗号化キーも手入力する必要が無い |
iPod Touchで使ってみた限りでは認識に少々手間取ったが、それでも手入力するよりは簡単に設定できた。なお、QRコネクトを使って設定できるのは出荷時設定のSSID1と暗号化キーなので、SSID1の名前や暗号化キーを変更してしまうと使えなくなってしまう。
●まとめと感想WN-AG450DGRは450Mbps対応の無線LANルーターとしては後発の部類に入る。速度については最速というわけではないが、搭載している機能を見ると他社製品で搭載されている機能をほぼ網羅し、プラスアルファとしてアイ・オー・データ機器が得意としているnet.USBを搭載している。カタログで機能比較をすると多分最初に気になる製品だと言えるだろう。
機能面の充実ぶりと比べると、管理画面はシンプルで控えめだ。解説本並に丁寧で、用語解説も豊富な他社製品の管理画面と比べるとちょっととっつきにくいと感じる人もいるかもしれない。ただし、情報量を減らしてシンプルさを追求するのも方向性の1つだ。どちらを目指すにせよもう一段のブラッシュアップを期待したい。
ちょっと便利なのがQRコネクト。シンプルながらスマートフォンやタブレット端末から無線LANルーターを使いやすくしてくれる気の利いたアプリだ。ただ、ここまで便利にできるなら、いっそ管理画面もスマホやタブレットでも使いやすいデザインにしてもらえたら、というのは期待しすぎだろうか。それから、SSIDや暗号化キーを変更した時のためにQRコード生成機能があると便利だと思うのだがどうだろうか。
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