――2021年は、日本IBMにとっては大きな変化の1年でしたね。
コロナ禍において感染者数が増減するなかで、お客さまやパートナー、日本IBMの社員が、数々のプロジェクトを推進しながらも、新たな仕事のスタイルを導入しつつ、安全に、健康に取り組むことができる環境の提案に力を注ぎました。これは日本IBMにとって、1年を通じて重要な取り組みであり、これからも続けていくことになります。
そして、なんといっても、キンドリルの分社化という大きな出来事がありました。キンドリルは、IBMのマネージドインフラストラクチャーサービス事業を分社化し、水平方向のプラットフォームの提供と運用を支援する役割を担います。日本IBMはその上で、OpenShiftをベースにしたアプリケーションを開発するプラットフォームフリーの状況を作ることができ、AIなどのテクノロジーを活用した提案や、DXに関わるコンサルティングなどを担当することになります。
日本IBMの山口明夫社長――キンドリルが分社化したことで、日本IBMにはどんな変化が起こりましたか。
日本IBMが新たに目指す姿は、「テクノロジーを活用した共創パートナーモデル」となります。それによって、あらゆるものを変化させていきます。例えば、日本IBMは2021年に営業体制を大きく変更しました。それまでの営業体制は、1990年代半ばに日本IBMが取り扱う製品が大幅に増加したときに構築した仕組みであり、ハードウェアやソフトウェアの製品ごとに担当を置き、SIerとしてお客さまの課題を解決したり、アウトソーシングによって業務を支援したりといったビジネスを行ってきました。これを一気に変更し、社員全員がお客さま担当、社員全員がスペシャリティを持つという方向にシフトしました。
これからの日本IBMには、従来型の営業担当者はほとんどいなくなります。その代わりに、テクノロジー営業と呼ばれる人たちが増え、テクノロジーと、それをサポートするエンジニアが中心となり、人とテクノロジーで新たな未来を創っていくことになります。これが、これからの日本IBMの体制です。以前は、コンサルティング、ハードウェア、ソフトウェア、それらを全部見る担当営業という形でしたが、その体制は、IT部門だけが窓口になっている時代であればよかった。日本IBMの役割は、IT部門にソフトウェアを売って、SIを提供し、アウトソーシングを受注すればいいからです。
だが、お客さまのなかにITが広がっていくと、IT部門だけをカバーしている体制だけでは難しくなります。いまは、あらゆる部門がテクノロジーを活用し、変革に取り組んでいます。このように、お客さまのITの形態が変化すると、お客さまやパートナーと一緒に作り上げる共創モデルがより重要視され、これまでの1対1の関係ではなく、N対Nの関係が前提となります。
そうした変化をとらえて、日本IBMは、テクノロジーを活用することでトランスフォーメーションを支援する「テクノロジーを活用した共創パートナーモデル」へと変革することにしました。
これは、従来のハードウェアやソフトウェア製品の販売モデル、SIモデル、アウトソーシングモデルとは異なるものであり、それに向けて社員をリスキルしたり、フォーメーションを変えたり、マインドセットを変えたりといったことを、この1年間にわたって行ってきました。日本IBMの社員全員がお客さま担当であり、社員全員がスペシャリストとなる変革は、ほぼ最終フェーズへと入ってきました。これを2022年に定着させ、本格的にスタートさせることになります。
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